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第8話
優しい眼差しで見つめられる。
この目をもう失うのか。
いや、この目を自分だけのものだと思っていた自分がバカだったのだ。
可愛くて綺麗な女の子とこれからはいるんだろう。
その方が相応しい。
幼なじみの神経質で潔癖なつまらない彼といるよりは。
涙をこらえながら、覗き込み見つめ返すことに今まで恐怖感などを感じたことのなかった、その暖かな色の瞳を、怯えながら見つめ返す。
「・・・理由、言って。・・・・・・嫌いって言って。そしたら、諦められるから」
震える声で言った。
幼なじみの声でそう言われるたのなら、胸は張り裂けても、諦められる。
幼なじみが望むならそれを受け入れられる。
彼はそう決めたのだ。
幼なじみは、ぽかんと口を開けた。
目を丸くして、本当に驚いているのだとわかった。
そして次の瞬間、重いため息をついた。
「・・・・・・そう来たか」
幼なじみは呻いた。
何か何か何か間違ったのだろうか。
何か何か何かさらに嫌われるようなことをしたのだろうか。
「お前は、僕がいなくなってもいいの?」
投げやりな調子で言われた。
怒っているのだと分かった。
声を荒げたりは絶対にしない。
でも、幼なじみがかなり激しく怒っているのはわかった。
でも何に?
途方にくれるしかない。
「・・・・・・お前を好きな人は沢山いる」
震える声で言った。
オレとなんかいちゃいけない。
オレに縛り付けちゃいけない。
きっと素敵な人がお前の隣りにいることになるだろう。
オレみたいに・・・潔癖で、つまらないヤツじゃない。
「そう・・・ホントにもう・・・」
幼なじみは呻いた。
「僕の理性に感謝して。むちゃくちゃにしてやりたい」
幼なじみは低く唸った。
彼は怯えた。
殴りたいほどに、おだやかな幼なじみがそう思うほどに怒らせたのだろうか。
突然、幼なじみの身体が近付いてきた。
触れる距離感に怯えて、思わず身体をそらし、ベッドの上に倒れた。
でも、構わず幼なじみはのしかかるように身体を近づけてくる。
触れないギリギリの距離で止まった。
大きな身体が覆い被さるように彼のすぐ側に、本当にすぐ側にあった。
「・・・・・・好きだよ」
耳に触れそうな距離で吐息と共に囁かれた。
「好き。めちゃくちゃ好き」
甘く囁かれる声の意味は、さすがの彼でも分かった。
でも。
でも。
意味は分かってもそれを信じられない。
「身体中に触りたい。キスしたい。舐めまわしたい・・・突っ込みたい、突きたい掻き回したい。お前のを咥えたい。舐めたい。中で出したい。僕のを咥えさせたい。だから、離れるって言ったんだ。お前、そういうの嫌だろ?」
欲望を隠そうともしない言葉。
飢えたような目。
でも、決してその身体に触れようとはしないのだ、幼なじみは。
「辛いんだ・・・」
その声は苦痛に満ちていた
「毎日お前で抜いてる。お前が泊まりに来た夜はお前の寝顔で抜いてた」
淡々と幼なじみは言う。
「離れるしかなかった」
お前のために。
幼なじみはそう言う。
彼は真っ赤になる。
そんな言葉は予想していなかった。
そんな事は考えたこともなかった。
うろたえて、目を泳がせ、身体を縮める。
それでも、幼なじみの熱い身体はすぐ側にあり、飢えたような目は逸らされることなく、彼のそんな表情を見逃がしてくれない。
「好き。めちゃくちゃ好き」
囁かれた。
その言葉は心の真ん中に届いた。
「好き。お前だけ」
苦しそうな声で囁く。
オレだけ?
オレだけ?
沢山の一人じゃなくてオレだけ?
その言葉は甘い。
特別な一人になれることが嬉しい。
頭を痺れさせる。
でも怖い。怖い。怖い。
「触りたいんだ」
幼なじみは言った。
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