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第9話
「うぁっ・・・ふぅっ・・・」
声を抑えられない。
「ここ、自分でしたことある?」
幼なじみが優しい声で聞く。
声は優しい。
指も優しい。
でも、止めてくれない絶対に。
指はゆるゆると彼の勃起した性器を扱いていた。
楽しむように幼なじみはそこを愛撫する。
そんな質問には答えたくない。
夢精したことこそあれ、自慰などしたことなどない。
性に嫌悪感しかなかったのだ。
「したの?」
先端の穴の辺りをこすられて、つま先を丸め身体を強ばらせた。
「ああっ!!」
これが何なのかわからない、ただ叫ぶだけだ。
快楽に不慣れ身体に、その指が与えるものは強過ぎた。
溜まりにたまった快楽がはじけた。
止める術さえ知らなかった。
迸る熱に、脳を焼かれる。
白い喉を反らし、彼はガクガクと身体をさせた。
「自分でしたの?」
それでも、まだ幼なじみはそこを弄るのだ。
「いやぁ!!」
彼は悲鳴をあげた。
怖すぎた。
キスさえしたことのなかった身体には快楽と苦痛と恐怖の境目がわからない。
「したの?」
優しく囁かれた。
こたえなければ、止めてもらえないとわかった。
「したことない、ないから、してない・・・」
泣き叫んだ。
「そう・・・僕がはじめてここで君をイカせた」
幼なじみは彼にキスする。
またふにゃふにゃに顔が溶けている。
何でそんなに嬉しいの?
何がそんなに嬉しいの?
幼なじみの舌は熱く優しく、彼の舌を溶かした。
性器への愛撫より、キスは怖くなくて、彼はホッとした。
優しく背中を撫でられることにも少し慣れた。
何より、幼なじみの匂いに安心した。
終わったの?
これでおわり?
「次は僕のも一緒にするね」
囁きは甘く、怖い。
幼なじみは自分の服を脱ぎ捨てる。
彼は目を閉じる。
他人の裸も彼には恐怖でしかないのだ。
「見て。今日から君だけのモノだから見て」
優しい声はでも、逆らうことを許さない。
性器を擦られ、慌てて目を開く。
止めて欲しくて。
自分のものとは全部違う身体があった。
広い胸も、鍛えられた手足も、大きさも分厚さも全く違っていた。
そして、顔おさえつけられ、見ないようにすることを許されなかったソレも自分のモノとは全然ちがった。
大きくて、グロテスクだと思った。
怖い。
怖い。
「僕は君だけのモノ。だから見て。僕をみて」
髪を撫でられ、熱い息とともに耳に流れこむ言葉。
オレだけのお前?
遠くから見るしかなかった時間がその言葉を甘く感じさせる。
こんなモノをみることは恐怖でしかないのに、自分のモノでさえ出来るだけ見ないようにしてきたのに。
「オレだけの?」
思わず呟いてしまう。
幼なじみを失ったあの恐怖は、性的なものへの恐怖を凌いだ。
彼は幼なじみの裸を見つめた。
怖かったし、それはやはりグロテスクだったけれど、ソレが幼なじみの一部であることは受け入れられそうだった。
いや、無理だった。
彼が見つめただけで、大きいソレはさらに大きさを増したからだ。
怖くなって彼は悲鳴をあげた。
「いや、ついね・・・」
幼なじみは苦笑した。
「握って」
甘えるように言われて震えた。
そんなこと・・・出来るはずが・・・。
「お願い」
顔を近づけられ、頼まれる。
いつものあの笑顔だ。
「仕方ないな」っていつも言ってしまうあの笑顔だ。
でも、これは・・・。
彼は震えた。
止めてって言えば、止めてくれる。
幼なじみを信じていた。
でも、そうしたら離れてしまうの?
嫌だった。
だから震える指をのばした。
怯えながら、熱くて硬くて、濡れたそれに触れた。
そっと握った。
「うっ・・・」
怖くて泣く。
でも両手で握る。
離したくないから。
「お前が僕のを握ってる・・・」
堪えきれないように呻かれた。
嬉しいのだとわかった。
本当に喜んでいるのだ。
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