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念願~ピュア

 愛しい。  愛しい。  可愛い。  可愛い。  オレのために耐えてるのか?  オレのために。    切ないよ。  オレ・・・切ない。  快楽よりも強い想いが身体を焼いた。  「・・・好きに動け!!バカっ!!」  オレは怒鳴った。  怒鳴られてアイツはキョトンとして、それから首を振った。  「先生に無理はさせね」  優しく動かれ、オレはまた喘ぐ。    だけどオレは嫌だった。   オレだけ良いセックスなんて嫌だ。  オレだって。  オレだって、お前を気持ち良くしたい。  でもオレ、わかんないだ。  オレセックスまだわかんないだ。   だからせめて。  「好きに動けって!!我慢すんなバカっ!!」  オレは怒鳴り、アイツを殴りつけた。  「?」  アイツが驚いた顔をしてるから、反対側も殴った。  まあ、こんな状況なのでちゃんと殴れなかったけど。  それでもグーでなぐった。  「オレだって・・・お前を・・・」  気持ち良くしたいと、言いかけてやめる。  アイツが笑った。  声を上げて笑った。  セックスの最中とは思えない声で。  「ああ・・・先生!!オレも愛してるぜ!!」  アイツは叫んだ。    いや、オレ「愛してる」なんて言ってない!!  「壊れないでくれ・・・」  アイツが囁いた。    「壊れねーよ!!」  オレが怒鳴った。   アイツはもう一度笑った。  そして次の瞬間腰を叩きつけられた。  「ああっ!!」  オレは衝撃に叫んだ。  それは思っていた以上だった。  何度も串刺しにされた。  内臓を引き剥がされた。  中から焼きつくされた。      首を噛まれた。  呼吸が止まる程深いキスをされた。  衝撃で骨が砕けるかと思う程腰をぶつけられた。  いちばん奥を犯された時は、気をうしない、衝撃にまた引き戻された。  快楽というにはあまりにも激しすぎた。  苦痛と言うにはあまりにも甘すぎた。  耐えられなくて、アイツに爪をたて、噛みつき、キスを求めた。  アイツは唸りながらオレを食い尽くしていた。  「  」   何度も何度もオレの名前を叫んでいた。    オレはぐちゃぐちゃになって泣いていた。  泣き叫び、アイツの指を噛みしゃぶり、ダラダラと前から射精しながら、何度もイっていた。  女みたいに身体を揺らして。  女みたいに声を上げて。  それは絶対に認めたくない姿だった。   オレは男だった。  オレはそんな風にされたくはなんかない。  でも、オレは・・・お前にならそうなってもいいって思ってる。  お前にだけはこんなみっともない姿になってもいいておもっている。  お前だけだ。   お前だけだ。    お前だけだ。  「オレを・・・愛してくれ!!」  愛されなくてもいい。  嫌いでなけらばいい。  そう言っていた少年がオレの上で泣いた。  ぐちゃぐちゃで、もう何かんがえてんのか、何言ってんのかわからない今だから・・・オレは言っていた。  「愛し・・・てる」      その言葉を聞いてアイツは目を見開き、それから声の限りに咆哮した。  そして、さらにオレに襲いかかった。  襲いかかりやがった。    さすがにオレは死んだ。        「先生・・・先生・・・許してくれよ」  アイツがアイツのデカい布団の中に潜り込んだまま顔も出さないオレに必死で謝っている。  オレは返事をしない。      「・・・なぁ」  布団の上から揺すられる。  子供が休みの日の父親を起こしてるみたいだ。  「うるさい!!・・・・・好きにしてもいいとは言ったけどな、気絶してからもし続けていいとは言ってない!!」  オレは怒りまくっていた。  歯止めがきかなくなったアイツは、気絶してからもオレを犯し続けたのだ。  そして、オレが動かなくなったことに焦り・・・医者をよびやがったのだ。    オレは冷静な医者の手によってアイツが中にだしまくった精液を医療器具を使って洗浄され、やはり少し裂けたアナルに薬を塗られたのだ。  コンドームなんて最初の一回しかつかってなかった。  クソっ!!  撃たれた傷は意外と大丈夫だったみたいだが・・・わきまえた医者がどんどん出てくる精液にも、吸われまくった跡や噛まれ歯形にも、余計なことを一つも言わないことが・・・余計に屈辱だった。  我が人生最大の屈辱だった。     このバカのせいで。  このバカのせいで。  「先生・・・・」  アイツが泣き声だけど知るか。  オレはただでさえ落ちていた体力が完全に奪われ動けないし。  むさぼり尽くされた。  コイツとのセックスは考えないといけない。    「先生・・・先生・・・」  アイツが泣いてる。  マジか。    ゴリラが。  「嫌わないでくれ・・・」  不安に震える声。  仕方ないな。  「嫌わないから、出ていけ」  それだけは言ってやる。  「本当か、本当か、本当に愛してくれてんだな!!」  今度は浮かれ出す。  愛してるとは言ってねーよ!!  「出ていけ!!」  オレは布団から顔を出して怒鳴った。  掠れ切った声で。  この声もアイツのせいだ。  「愛してるぜ、先生」  アイツが満面の笑みをたたえて隣りの部屋に一応行ってくれる。  やっと静かになった。  アイツが鼻歌混じりに台所で歌っている。  小さな離れは生活音に溢れてる。  低音が歌うのは時代遅れのラブソング。  しかも女心を歌ってる。     アイツの母親が歌っていたのだろう。    おかしくて笑えた。  アイツが歌えるなんて知らなかった。  上手いじゃないか。  どんだけご機嫌なんだ。  なんか上手いもんでも作ってくれるんだろう。  医者からも無茶はだめですが(濃厚なセックスの跡を完全に無視しながら)普通に生活してもいいですよ、と言われたし。  食べていいだろ。  アイツの飯は美味いんだ。  アイツが「先生飯だ」と起こしにくるまで、もう少し寝よう。  アイツの歌。  それは去った恋を懐かしむ歌で。  その切ない歌詞をこの上もなく嬉しげに歌っているのがおかしくて。    そうか。  幸せか。  そうか。   嬉しいか。  お前には言わない。  調子にのるから言わない。  でも、オレもだよ。  オレは目を閉じ眠りについた。  END    

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