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第一章・7

「もう、ヤバいよ。これは……」  征生に車で送ってもらった、マンション。  組長からの、プレゼントだ。  大翔の家庭教師を引き受けてくれたお礼、と称して贈られた。 「あの時も、征生さんがいたんだっけ」 『最上階を一室買い取ってあります。先生、どうぞ快適にお過ごしください』 『困ります! 僕、贈与税とか払えません!』 『そこはご心配なく。抜かり有りませんから』 「征生さんに、抜かり有りません、とか言われると、もう信じるしかないよね」  あの時の眼を、思い出す。  鋭いまなざしの中に潜む、優しさ。  時折見せる、甘い表情。  ふぅ、と楓は息を吹いた。  何だか、少し熱い。

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