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第五章・5

「もしかして、仲よくしてもらったのはあの時だけなんじゃないか、って。僕……」 「そんなわけ、ないだろう」  征生が、頬を寄せて来た。  触れ合いそうになった唇の間に、楓はとっさに手のひらを差し入れて拒んだ。 「僕と大翔くんとのことは? 外で聞いてて、何とも思わないんですか?」  我知らず、ぽろりと涙をこぼしていた。  その頬の涙を拭い、征生はただ言った。 「いつ、どこで、誰と寝ようが構わない。最後に、この俺の隣にいてくれれば、それでいい」  鋼のように鍛えられた、その精神。 「馬鹿……」  そして、そんな所も好きになっちゃたんだろうな、と楓は降参した。 「楓」  今一度、征生は唇を近づけて来た。  今度は、楓も拒まなかった。

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