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第1話
「やめて、やめて」
僕はかすれた声をあげ続ける。
ああ、あぁ
変な声が漏れる。
僕の胸を撫でる指先の丹念さが恐ろしい。
執拗にただ撫でられているだけなのに、だんだん僕の身体に熱が集まりはじめている。
背中に熱い肌を感じる。
僕は、誰かに背後から抱えられ、仰向けにベッドに横たわっている。
何も見えないからよくわからないけど。
ただ、僕が何も纏っていないこと、そして目隠しをされていること 、そして、僕を抱き締める男が上半身裸であることだけは分かる。
そして男の指がとても熱いことも。
僕は力の入らない身体をよじる。
何か飲まされたのだきっと。
抵抗出来ない。
男にただしっかり背後から僕をその長い脚で抱え込まれ、(ジーンズのような布地を僕は肌に感じる)僕の胸をその両手で撫でさすられているだけなのだけれど。
さすられているだけなのに。
ただ、丹念に。
執拗に。
乳首を指が何度もかすめる。
もう何時間もこうされているうちに僕はおかしくなってきている。
与えられる感覚は、男の上半身の肌と、この手の感覚だけ。
そして男の匂い。
ムスクのような、香水ではない体臭。
熱い手のひらが僕の胸を丹念に撫でさする。
撫でさするだけなのに。
嫌だ、こんなの。
乳首をまた指がかすめた。
はん、
声がこぼれる。
「嫌、嫌」
僕は呟く。
そう、もっと強く触って欲しくて。
触れられると、身体がピクンと揺れるを止めたくて。
「やめて、お願い」
僕は男の手に合わせて蠢く自分の身体を止められない。
この手を止めてくれなければ、おかしくなってしまう。
男 指が胸を這う度に、そこから生まれる感覚が僕を
「おかし、く、なる」
僕は身をよじる。
男は今度は丹念に優しく乳首の周りだけを指でそっとなぞりつづける。
そんなところをやんわりと刺激されつづけたら、こんな感覚が生まれるなんて、僕は知らなかった。
吐息のような快感。
「もう、やめ、て」
かすかに身をよじる。出るのは声だけ。
動かない身体。
でも、優しすぎる感触には物足りなさがあり、切なさがある。
目覚めた時から与えられ続けているこの感触。
最初は夢だと思った。
今でも夢じゃないかと、いや、コレはきっと夢。
淫らな悪い夢。
僕の下腹部が立ち上がっているのが分かる。
僕は男に裸で胸を撫でられ、立ち上がっているのだ。
しかも僕 喘いでいる。
男の愛撫に。
悪い夢だ。
そして僕の尻の下の男のズボンの中には固い何かがあることが一番悪夢だ。
「こんなの夢だ」
僕は泣きながらつぶやく。
その間にも男の指や手のひらは、僕の胸をそっと撫でさする。
熱さが、その丹念な繊細さがもどかしい。
僕は男の手をつかもうとした。
もっと強く押し付けようとしたのか、払おうとしたのか自分でもわからない。
手は弱々しく上がったが、それさえ出来ない。
せめて、僕は自分の股間へと手を伸ばした。
もうこんな刺激では耐えられない。
ほのかな快感ではイケない。
何かを直接与えてやりたかった。
男の手が僕の手を押しとどめた。
僕は辛すぎて泣く。
初めて、男の押し殺した声が聞こえた。
男は、少し笑ったようだった。
熱い息を首筋に感じた。
「お願い」
僕は懇願した。
やめてほしいのか、それとも。
僕はわからなくなっていた。
男の指が胸から離れた。
熱い指が僕の立ち上がったものに触れるのが分かった。
僕はただ必死でわずかに動く身体で、その熱い手にそれをすり付けようとした。
これは夢。
夢なんだ。
だから、その熱い指が淫らに動くことも、 そこに与えられる快楽も、存分に受け入れ、声を上げ、放出した。
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