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LOVE IS SOMETHING YOU FALL IN. 第11話
(俺、っ、俺、どうしたらよかったんだよっ……!)
願い通り変わらずにいた自分に、友人達は一人、また一人、一方通行の想いを抱き続ける苦痛に耐えかねて居なくなってしまった。
それを嘆き、悲しみ、落ち込んだ悠栖は、親友である唯哉と英彰にすべて話していた。
自分はどうするべきだったのかと助言を求めたことも一度や二度じゃない。
でもその度に二人は『残念だけどしかたない事』だと言ってくれた。『悠栖は悪くない』と言ってくれた……。
それなのに英彰は、全部知っているはずの親友は、自分が一番悩んで落ち込む方法で友人関係を解消して去っていった。
当然今までの比にならないぐらい深く落ち込んだが、今は英彰も冷静さを欠いた状態だがいずれ昔のように友人として笑い合える日が来ると唯哉が励ましてくれたから、時間が解決してくれることを信じていつも通りの自分でいられるよう努力した。
高等部に進学したらまた部活で嫌でも顔を合わせるからと高を括っていたからというのも気持ちを切り替えることができた大きな要因だろう。
だが先週、英彰がサッカーを辞めたことを知った。
知って、悠栖は自分が望む未来は二度と来ないと言われた気がした。
その時のショックと言ったら言葉では言い表すことができないぐらい大きかった。
正直、金曜の放課後から翌日の朝までの記憶があやふやなぐらいだ。
『大丈夫だ』と言って自分を慰めてくれていた唯哉もこの時ばかりは不用意な言葉をかけることはできないと思ったのか、一緒に居ても英彰の事については何も言ってこなかった。
改めて叩きつけられた絶縁状。
悠栖は自分よりもサッカーが巧かった英彰のためにサッカー部を辞めようかと考えた。
だが弱気になっていた自分に、サッカーなんてルールも分からないだろう朋喜と慶史が言った。サッカーが大好きなくせに振った男からの嫌がらせに負けるな。と。
英彰のやり方が汚いと批難し、器が小さいと蔑んだ二人。
それに悠栖は『ヒデを悪く言うな』と言いたかったが口からは言葉は出なかった。
むしろショックと罪悪感に抑えられていた『本心』を自分の代わりに口にしてくれた二人に笑ってしまった。
悠栖は改めて、自分を曲げないと決めた。
だから、今もここに居る。
しかし、先輩達は、チームメイト達は、それを望んではいなかった……。
(やべ……泣きそう……)
先輩達の『本心』を知って、決心が揺らぐ。
悠栖は唇を噛みしめ、手を握り締め、踵を返した。
今このドアを開くことはできないと思ったから。
だが、その場を立ち去ろうとした悠栖の目の前に誰かが立ちはだかっていた。唯哉だ。
悠栖はそこで漸く部室に向かっていたのは自分だけじゃなかったと思い出した。
「……部活、始まるぞ」
固まった悠栖にかけられる唯哉の声は静かなもので、声量も抑えられていた。
どうやら全部見られていたし聞かれていたようだ。
温厚な唯哉にしては珍しく眉を顰めていたから。
悠栖はなんとかこの場をやり過ごさなければと思った。
でも頭は全然働いてくれなくて、今何か考えようものなら無様に泣いてしまいそうだった。
「なぁ天野、お前、熱あるよな?」
自分を見下ろす唯哉の視線から逃げるように俯いていたら、突然手首を掴まれる。
それは唯哉の大きな掌ではなくて、もっと細くしなやかなもの。
いったい誰だと顔を上げれば、其処には何故か部室棟の前で別れたはずの那鳥の姿が。
状況が把握できずに「え?」と声を上げる悠栖。
だが、那鳥はそんな悠栖の事などお構いなしに唯哉を振り返ると、
「天野は風邪ひいて高熱でダウンした。馬鹿だから倒れるまで気づかなかった。分かったか?」
そう言い切って唯哉に復唱するよう詰め寄った。
「『悠栖は風邪を引いていて熱があった』。『部活のために無理をしていたが、移動途中で倒れた』」
「よし。後は任せたぞ」
「ああ。分かった」
那鳥が言った言葉を自分の言葉として口にした唯哉。
那鳥はまぁいいだろうと納得を示し、悠栖の手を掴んだまま来た道を戻り始めた。
「ちょ。ひ、姫神、何して―――」
「んな顔して部室入ってどうする気だ。お前も喋ってた奴等も気まずい思いするだけだぞ」
待てと言いながらも那鳥に手を引かれるまま部室から遠ざかる悠栖。
抵抗しようと思えば簡単にできる程度の力でしか手首は掴まれていないが、今は『抵抗して姫神に怪我をさせたくないから仕方ない』と自分を偽った。
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