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LOVE IS SOMETHING YOU FALL IN. 第28話
「違うよな? どう考えても酷いのはお前だよな!?」
気が付けばまた詰め寄って捲し立てていた。
興奮のあまり肩で息をする悠栖。『自分は間違っていない』と強い自信があるのだろう。
しかし、そんな悠栖に那鳥は逆に問いかけてきた。
「なら、お前は『好意』のかけらも持ってない相手に愛想を振り撒いて『ストーカー予備軍』を俺に作れって言いたいのか?」
「! そんなこと言ってないだろうが!? そもそもチカは『ストーカー』になんてならない!!」
「それはお前があいつを知ってるからだろうが。俺はあいつの事なんてほとんど知らないんだよ。三週間前かそこらの付き合いで喋るのは昼休みだけなんだぞ? 信頼なんてできるわけないだろうが」
それに相手が自分に『好意』を抱いている場合対応を間違えれば厄介な事になりかねない。
そう説明する那鳥は理性的だ。
一方で感情的な悠栖は「俺の親友だぞ!?」と更に怒りを露わにする。
これではいくら話したところで平行線を辿る一方だろう。
那鳥はジッと悠栖を見据える。頭に上った血を下げることは可能かどうか見極めるために。
だが今の悠栖からしてみれば那鳥の状況を把握するための眼差しすら怒りのボルテージを上げるモノに代わってしまう。
値踏みするような視線だと鬼の形相を見せる悠栖。
冷静に話し合う事は不可能に近そうだ。
「……悪かった」
「! はぁ!? なんだと!?」
「だから、悪かったって言ってるんだよ。……汐へ言ったことは確かに暴言だった。認めるよ」
謝罪の言葉にも声を荒げる悠栖はいよいよ言葉すら正しく理解できない程感情的になっているようだった。
那鳥はそんな悠栖とは反対に極力声を荒げないように気を付けながら申し訳ないと謝った。
同情を誘うように「嫌な事が立て続けにあってイライラしてたんだ」と覇気無く『理由』を伝え、「八つ当たりだった」と自分の非を認めたのだ。
「な、何考えてるんだっ?」
「何も考えてない。……自分でも確かに言い過ぎたとは思ってたしな」
それでも言葉を撤回しなかったのは、自分が口に出した言葉だから。
『勢いで出た言葉だ』と訂正することは簡単だが、その瞬間、自分の言葉の信憑性は無くなってしまう。
だから言い訳も撤回もしなかったと言う那鳥。
悠栖は、那鳥の言いたいことはとてもよくわかった。自分も彼と同じ考えだから。
那鳥が謝ったからか、それとも自分と同じ信念を持っていると知ったからか、悠栖の頭からは沸騰しそうだった血の気が引いて冷静さが戻ってくる。
一歩後ろに下がり、息巻いていた反動で放心気味に「分かってくれたらいい……」と呟く悠栖。
那鳥は肩を竦ませ、約束する。唯哉に対して今日の暴言の釈明を行うことと傷つけてしまったことへの謝罪を行うことを。
「ほ、本当にか……?」
「ああ。本当に。……汐が許してくれるなら、これまで通り話をしたいって事も伝える」
念押ししなくても友達に嘘はつかないから安心しろ。
そう言って笑う那鳥が示した『友達』という単語は、他でもなく自分の事だと分かった。
悠栖はまだ状況を整理しきれないながらも、「ありがとう……」と礼を述べた。
「……まだ納得できないか?」
「! あ、いや、そういうわけじゃなくて、なんていうか……。なんて、いうか……」
「…………自分でも分からない。って感じだな」
「ああ……そんな感じ……」
怒りを鎮火させた悠栖は実に素直だ。那鳥は悠栖の肩を叩くと、考えるのは部屋に戻ってからにしてくれと笑った。
「今日のノルマがまだ終わってないんだ」
「『ノルマ』?」
「そう。応用数学の問題集。天野もするか?」
「! いい! 遠慮する!!」
指さされた机の上に広がる参考書に悠栖は顔を顰め、後退る。学校の課題だけでおなか一杯だ! と。
その拒絶反応の激しさに那鳥は声を出して笑い、笑われた悠栖は一緒に勉強しようと誘われたくないとそそくさと部屋を後にした。
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