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入寮 1

1  インターホンがあったので押してみたけど反応はなく、ノックをしてみたけど以下同文。 「しつれいします」  戸をひくと鍵は開いていたので、すばやく深呼吸して足を踏み入れた。  山奥の広大な土地に建つうちの学校は由緒ただしい私立のお坊っちゃん学校だ。全寮制で生徒は学校の敷地にある寮に入ることを義務づけられている。  基本的には簡易の台所がついた十畳ほどの部屋に二名もしくは一名があてがわれる。  ただ一つこの寮には例外があった。大浴場やら食堂やら抜けた一番奥、一階で一つだけの寮生部屋。八人部屋。別名ハチノス。それがこの部屋だった。  入ってみると玄関は広めだ。目の前には二つの扉でよこは廊下だ。廊下にもいくつかの戸がついている。以外にも全体的にきれいに使われているようだ。靴も自分の汚いスニーカーと違って高そうな靴が並んでいた。  目の前の戸からに大柄な男がでてきた。  どうやら前の扉はトイレらしい。横は洗面所だろうか。  男はいぶかしげに僕の前に立った。 「えっと、新入生? どこかと間違えて入っちゃった?」  男は太い眉と短い髪で強そうなイメージだけど、親切そうな顔を見せた。 「違います。新見美波です。今日からこの部屋でお世話になります」 「まじで?」  男は僕を上から下まで観察している。 「はい。よろしくおねがいします」 「……一人でも、まともそうな奴が来てくれて嬉しいよ。俺は二年の三宅慎太郎。今年の監督生枠だ」  三宅さんはやっぱり困惑した表情だけど手を差し出してくれたので僕も手を差し出した。 「他の人はもう着いていますか?」  三宅さんの温和そうな感じですぐに僕は胸をなでおろしたと思ったら、ダンッと乱暴な音がして左手の奥の扉が開いた。僕に返事してくれたみたいだけど、嬉しくない。  出て来たのは上半身裸の男だった。細マッチョなモデル体型だ。ふわふわと明るいはちみつ色の髪が揺れてる。色素が薄いのか電気に照らされて赤く染まった目がこちらを射抜くみたいに睨んだ。色気のあるイケメンさんだ。これは男でも見ほれる。  男は外に出るみたいだ。 「おい、どこに行く」 三宅さんが聞いても男は無視をしたけど、通り際に男の顔が僕の耳元にぐっと近づいた。 「お前が新見弟か? 俺はお前が嫌いだ」 「えっ」  声もいい声だなんて。そうごまかして言われたことの意味は深く探らないようにした。  男は靴箱から黒一色のフロックスを出す。裸足をつっこんで出ていった。 「今のは一年生の間宮悟だ。あいつ上半身裸でどこ行く来だよ」 「さすがに、遠くには行かないんじゃないですか? 売店とか?」  売店も一階ですぐそこだ。そういう意味ではここは便利かもしれないなとか思ってみる。 「だといいんだけどな」 三宅さんは大きなため息を吐いたけど、気をとりなおして元の温和な顔を作った。だから僕もそれに合わせて苦笑を作る。 「全途多難ですね」 「ほんと。というか、前途多難はお前のほうだよ。こんな子鹿をここに入れるとか風評こえぇ。部屋割り悩むわ。まぁ、まずリビング行こうか」  僕はうながされるままに玄関の向かいのリビングに入った。

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