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第8話 カーナビ
剣上の車の助手席に乗るたびに、友一は不思議に思うことがある。
車には最新式のカーナビがつけてあるのだが、友一が知る限り、剣上がそれを使っているのを見たことがないのだ。それどころか電源さえ入っていない。
故障しているのかと思ったこともあったが、まだ新しいもののようだし、いつまでも故障したまま放っておかないだろう。
剣上とはもう何度もドライブに行っている。
道に迷ってしまったことも何回かあったが、そんなときでも彼はカーナビを使おうとはしなかった。
友一も剣上と二人なら道に迷うのも怖くないし、逆にそれが楽しかったりもしたので、特に不満にも思ってはいない。
それでも不思議なことには違いない。
いつか、理由を聞こうと思っているのだが、剣上と二人でドライブをしているときは、いろいろなおしゃべりに夢中で、つい聞くのを忘れてしまうのだ。
――それは金曜日の昼休みのことだった。
友一が親友の良太 と一緒に学食でのお昼ご飯を済ませ、教室へ戻るため渡り廊下を歩いているときだった。
「おい、友一、あれ剣上じゃね?」
良太が不意にそう言った。刹那、友一の胸がドキと高鳴る。
担任である剣上征一 と友一が恋人関係にあるということは誰も知らない。親友の良太でさえ。
「え? 剣上先生? そりゃいてもおかしくないでしょ。ここは学校なんだから」
友一は何気ない声を装ってそう答えた。
「いやいや。車の助手席に女乗せてんだよ。それも超美人。うわお、学校一のイケメン教師が昼休みに自分の車の助手席に女……これって、ニュースじゃん」
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