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第28話 誰よりも愛してる
「先生って、意外とヤキモチ焼きだよねー」
「そういうこと言うか? それに友だって、相当なヤキモチ焼きだろ?」
剣上に指摘され、ここは素直に認めることにした。
「……うん。先生がオレ以外の誰かを見るのなんて、絶対に嫌だもん」
そう言って友一は剣上の背中に両腕を回して、縋りついた。
剣上は友一の頭を優しく撫でてくれながら、囁く。
「今夜、マンション来いよ」
「平日なのに……?」
「手加減するからさ」
「そんなこと言って、手加減してくれたことなんて、ほとんどないじゃん」
「その代わり数学の個人レッスンしてやってるだろ?」
「……なんか話、すり替わってない?」
「そうか?」
剣上は切れ長の瞳を優しく微笑ませて、
「先に車で待ってろ。すぐに行くから」
車のキーを友一に差し出す。
「うん」
友一は微笑みを返すと、キーを受け取った。
職員用の駐車場へ向かいながら、友一は思い出していた。
――あの頃、笑うことができなくなってしまっていたオレに、再び笑顔を取り戻してくれたのは先生……。
幼いオレの気持ちに先生が応えてくれたから、オレはまた笑うことができたし、救われたんだ。
担任教師と生徒というリスクを承知で、オレを愛してくれた先生。今もずっと愛し続けてくれている先生。
オレは先生が好き、愛してる。誰よりもなによりも、大切な人……。
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