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第22話

「危ないからじっとしているんだよ」 「は、はい…」 緊張しながらベッドに横になると、秀臣(ひでおみ)さんは少しずつ洋服にはさみを入れていく。 何か所か刻むと、秀臣さんは布の隙間からのぞく俺の肌をゆっくり撫でる。 大きな温かい手。 最初に怖々俺を抱きしめていた彼と同一人物とは思えないほど大胆だった。 撫で尽くした後は、また洋服を刻む。 今度は隙間から俺の肌に唇を寄せる。 「…ぁ…秀臣さん…///」 変な声を出したら邪魔になるかと思ったけど、表現には五感を全部使うから、そのあたりは好きにしていいらしい。 「綺麗だ、環生(たまき)」 たっぷり時間をかけて、顔とプライベートゾーン以外の全身に口づけられた。 舐めたり吸ったりもしない。 胸も性感帯の乳首には触れない。 ただ純粋に唇で俺の肌に触れるだけ。 彼の芸術が完成する頃には、俺の体には申し訳程度に布切れがくっついているだけ。 彼はほぼ全裸の俺を満足そうに見つめながらベッドに座り直した。 性的な触れ合いをしてないのに下半身が兆してしまったから恥ずかしい。 「やはり思った通りだ。環生は最高のモデルだ」 秀臣さんは情欲的な瞳で俺を見ていた。 俺に…欲情してる…? もしかして…このままセックスする流れ…? さり気なく秀臣さんの下半身を確認すると、スラックスの上からでもわかるほど大きくなっていた。 ど、どうしよう…。 さすがに逃げられない気がする…。 非日常的なメイクや洋服でいつもと違う自分になった俺は、何でもできる気がしていた。 でも…。 確かに秀臣さんの事は魅力的だと思うけど、その感情はセックスには繋がらなくて…。 「環生」 「は、はいっ!」 緊張しすぎて声が裏返ってしまった。 「大丈夫、何もしない」 そう言って秀臣さんは俺の頭を撫でた。 「で、でも…秀臣さんの大きくなってます///」 「…そうだな」 「ど、どうしよう俺…///」 オロオロする俺に秀臣さんが微笑んだ。 「環生は何もしなくていい。ただ俺が自分でするところを見ていて欲しい。全てを自己完結させて満足したいんだ」 それって…秀臣さんのオナニーを見てればいいって事かな…。 オカズになっていればいいのかな。 秀臣さんのオナニーを見るのも、自分をオカズにされるのもドキドキするけど、自分が直接相手をしなくていい事に安堵した。 体を差し出さなくて済むなら、秀臣さんの望みを叶えてあげようと思った。 「はい、秀臣さん」 俺は秀臣さんを見つめながら静かにうなずいた…。

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