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第2章 第6話side.麻斗
〜side.麻斗 〜
「俺…麻斗さんがいい…」
頰を染めた環生 のご指名。
初日に不安そうに家にやって来た時から可愛い子だと思っていた。
飾り気のない素直な子だった。
シンプルなシフォンケーキみたいだと思った。
ふわふわしていて、自然な甘さで、どこか懐かしい。
ナチュラルな見た目も可愛かったけど、優しくしたり、頰にキスしたりすると恥ずかしそうにするのが本当に可愛くて。
慣れない家事も一生懸命。
風呂での俺の世話も戸惑いながら甲斐甲斐しくやってくれた。
柊吾 の事も気にかけてくれる優しい子だった。
環生の『行ってらっしゃい』で元気が出たし、『おかえりなさい』で疲れを忘れた。
性的な事には淡白な方で、それが原因でよく恋人を泣かせてしまった。
酷く罵られた事もセックスを強要される事もあった。
それがトラウマになって1対1のセックスができなくなった。
いっそ性欲や触れ合いたい欲求ごと無くなればよかったのに、人肌の温もりを感じて安心したい気持ちは消える事はなかった。
当時雇っていた家政夫の子に誘われて秀臣 と、柊吾 と一緒に4Pをしてみたら、今までの苦痛が嘘のように楽しいひと時だった。
例え俺が最後までできなくても、俺以外の誰かがいれば、その子を満足させてあげられる。
自分が全てを与えてやれなくてもいい。
そんな精神的な余裕がリラックスに繋がった。
時々、同意の上で複数プレイをするようになった。
でも、性欲旺盛な子だったから、俺では物足りなかったようだ。
結局複数でしてもがっかりさせてしまう。
そんな事が積み重なって、ますます消極的になっていった。
特定の誰かを抱きたいと思わなくなってだいぶたつ。
でも、環生と暮らすうちに環生なら最後まで抱けるかも知れないと思うようになった。
可愛い環生を悦ばせてあげたい。
それに、優しい環生なら俺の難しさも受け止めてくれるかも知れない。
俺に抱かれて恥ずかしそうにする姿も、兄弟に抱かれて乱れる姿も見てみたい。
そう思うようになっていった…。
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