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危険な夜の過ごし方2
「何故逃げる」
私は彼の手を掴んだ。
また今日もさっさと用事を済ませたら出て行こうとする。
この数日、彼が私を避けるのが納得いかない。
「逃げてなんかいませんよ、教授」
彼はそう言うけれど、何故その目が泳ぐ。
逃がして、見守ることも大事だと思ってきたが、彼に関してはもう、それを止めようと思った。
もう少し待てば、卒業して、彼は私の学生ではなくなると思って待っていた。
研究者としては師弟関係がなくなるわけではないけれど。
もう、待つのは限界に近づいていた。
私はため息をついた。
彼の首筋を撫でる。
彼がピクンと震えた。
彼の綺麗な首筋には赤い跡があり、それはひど く私の心をかき乱した。
「ご乱行だそうだな。ここに、キスマークがある。せめて隠せ」
私は嫉妬を押し殺して言う。
「教授、アイツヤバいぞ。オレも人のこと言えないがアイツ、いつか酷い目にあうぞ。アイツ、オレと同じようなつもりでヤバい遊びしているけど、アイツは本当はオレと違ってマトモだからな」
そう教えてくれたのは、あの男だ。
元はと言えばあの男のせいで彼は・・・
私は色々あの男について思うところはあったが、今はとにかく置いておく。
「キスマーク?」
彼の顔が真っ赤になる。
「あの人に聞いたんでしょう」
小さな声で彼は言った。
「良くない遊びをしてるそうだな」
声に苛立ちが混ざってしまうのを必死で堪える。
キスマークを消したくて何度も指でなぞってしまう。
「オレを軽蔑しますか」
小さい声で彼が言った。
睫毛がふるえている。
後少しで抱きしめてしまうところだった
酷いケガをした彼を抱きしめたことがある。
動けない彼を助けるために。
あの感触を私は忘れたことはない。
「するわけがないだろう」
私は当然のことを言った。
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