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満願成就な夜の過ごし方9

 「熱、い」  オレは思わず呻く。  「何が?」  教授ががぶりとオレの肩を噛みながら、囁く。  痛い。  でも気持ちいい。  その噛む口が、噛まれたあとが、触れる肌が、指が熱くて、オレは溶けそうになる。  「教授、体温高い、オレ溶け・・る」  ああ、気持ちいい。  こうやって、抱きしめられて、背中を抱かれるだけでも、うっとりする。  「そうかな、夏は嫌われそうだな」  教授は笑い、オレの髪を撫でてから、オレの胸に唇を落とした。  唇で優しく何度もそこに触れてから  乳首を舐められる、ゆっくりと。  舌が熱い。    ああ、  オレは小さく喘ぐ。  声は殺さなきゃ。  ここはオレの部屋で、壁は薄い。  誰も連れて来たことのない部屋の、狭いベッドでオレは教授と抱き合っていた。  どうしてこうなったんだっけ。    「家には帰ってくるなと言われたよ。君を狙っているヤツがいるらしい」  教授の研究室に行ったらそう言われた。  教授の机の前の椅子に座る。  「とりあえず、夜中に神社に集まることになったんだが」  教授が喋ってる間も というより、部屋に入ってからもずっと、オレはガチガチで、視線も合わせられなくて。  教授はため息をついた。  「そんなに固くならないでくれ」  オレはビクンと身体が震えてしまった。  こんな面倒くさいの嫌だよな。  オレだったら嫌だ。  そうだよな。  もっと気軽に、気軽に。  たかがセックスしただけじゃないか。  教授は立ち上がって、オレの前に立った。  俯いていた顔を上げさせられた。  唇が重ねられ、離され、何度かついばむように、優しくキスされた。    それに油断した次の瞬間、貪るように教授の舌が襲ってきた。  オレは教授の身体にすがって耐える。  喰われる、やっぱりこの人、野獣系だ。   しばらくオレを貪った後、ばつの悪い顔して教授が言った。  「あまりそんなに可愛い態度をとられたら、 私の理性がね、ここでこんなことするのは不適切なんだが」  すみません、教授。  オレは教授の留守中、この部屋であの人とやったことがあります。  オレは絶対に言えないことを思った。    「・・・何を考えたんだ?」  少し不機嫌な顔して教授は言った。  何であまりよくないこと考えたのわかったんだろう。  「いえ、別に」   でもオレはやっと朝から初めて教授をまともに見れるようになった。  やはり、ハンサムだな、と。   野生的な少し粗い目鼻立ち、大きなたれ気味の目が黒くて、視線が熱い。   「もう、帰れるか?」  教授が尋ねてきた。   「あ、はい」  オレは答えた。  「今から君の部屋に行きたい」  教授は言った。  やらしく笑いながら。  「私はまだ君を抱きたりない」  耳元で囁かれてオレは真っ赤になった。      そして、今こうなった。  教授がオレの肌を舐める。  わき腹の撃たれた痕に舌を這わす。  教授はそこが好きだ。  そんなとこただの傷跡なのに、なんで、オレこんなに感じるんだろう、  オレは抑えた手の中に声を零す。       教授の舌がへそから下にだんだんおりきてて。  いや、駄目だって。  オレは慌てた。  「駄目です、そんなとこ」  オレは教授の頭を離そうとした。  オレのものを教授が咥えようとしていたから。  元々ゲイじゃない教授にそんなことはさせられ、な、い。  咥えられて扱かれた。  オレは気持ち良すぎて意識を飛ばした。  熱い熱い教授の口の中は、驚く程気持ちよくて。  「教授、教授」  オレはうめいた。  「  」  教授 口を離して言った。   「えっ」   オレはもうやめて欲しくなくなっていて。教授の髪をかき乱し、ねだっていた。  「  。私の名前だ。こんな時に教授はやめてくれ」  教授はまたオレを咥えしごき、舐めた。  なんでこんなにいやらしいことがこの人出来るのか。  男はオレ以外抱いたことないくせに。  「  」  オレはその名前を叫んだ。  教授は、いや、オレの愛しい人は、やらしく笑って、オレを追い上げていった。  「出る、やめて、出る」  オレはこの人の口の中には出したくなくて頭を引き離そうとしたのだけれど、許してもらえなくて。  飲まれてしまった。    この人、本当はやらしい人だ、絶対。  恥ずかしくて、泣く。  「 」    呼ばれたのはオレの名前で。    オレは顔をあげた。  「 」  教授は真っ赤になりながらオレの名前をまた口にした。    オレは笑った。  オレも、真っ赤になりながら。    名前を呼び合いながらするセックスは気持ち良かった。  やはり教授は、野獣系で、途中から散々貪られた。  激しく突き上げられ、壁が薄いのにオレは結局声を上げさせられ続けた。  昨日ほどではないけれど、何度も噛まれた。  もう、痕が残るほど強くではなかったけれど、いつか噛み切られそうな感覚はまだあって、それが快感を増幅させた。  「喰ってしまいたい」  教授は何度も呻いた。  それはいつもの理知的な教授とは違って。  喉を噛まれる。   野生の獣に噛まれるような恐怖感と紙一重の快楽。  優しく甘く噛まれているのだけど、凄く怖くて気持ちいい。   オレがローションをベッドサイドから取り出した時には、何度も、穴を指でかき回されながら、この部屋でいつもやっていたのかと、責めながらイカされ続けたのはちょっと怖かったけど。    この人は意外と、本当は、嫉妬深い。  というより、オレの今までの素行が素行だから、仕方ない。  でも、不思議と「もう他の男と会うな」とかは言わない・・・。  今はゆっくりと、この人のものがオレの中で動いていて気持ちいい。  この人も気が済んだみたいで、優しく抱いてくれて、こういうのもいい。  「どうした?」  優しく囁かれ、  優しく髪をなでられる。  「いや 、オレに他の男と会うなとか、言わないんだな、と」  言ってしまって後悔する。  オレのビッチぶりは知っているこの人にこれからのオレを信じてもらえるかもわからないのに。  笑われた。   「私と目も合わせられないような君が、私に口でされただけで恥ずかしがる君が、そんな真似が出来るわけがない。君はわかってないけど、君は結局真面目なんだよ。それもとっても」  優しい目が、オレを見下ろしていた。   「でも、過去には嫉妬してしまう。それは許して欲しい。君が・・誰かと・・。」  優しかった目に、ヤバい光が宿り出す。  藪蛇だった。  「ちょっと、駄目、教授」  オレは怯える。  「名前で呼ぶように言ったはずだ」    唸るような声で言われ、噛まれた。  そして突き上げられる。  何度も何度も激しく。  「今は私だけの君だ」  耳元で耳を噛みながら言われる。  「オレだけのあなただ」  オレも言い返す。  振り落とされないようにしがみつきながら。  「そうだ。私は君のものだ」  あの人は、笑った。  オレだけに見せる笑顔だった。  

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