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髪にまで倫平の体液が付着していることに気づいた眞央は顔に付着した体液をティッシュで簡単にふき取ると、不機嫌そうに無言ですぐさま浴室に向かい、何の断りもなく服を脱いでシャワーを浴びだした。
実際、眞央は腹を立てていた。
倫平とはこれ以上の先のことはしたくないと思い、あからさまに浴室に逃げ出したのだ。
しかし、自分自身、倫平の何に腹を立てているのかが全く分からないでいた。
浴室のドアの外側から、
「店長」と、倫平の呼びかける声が聞こえる。
眞央は無視をした。
「店長っ」
「・・・・・」
「店長っ!」
応答がないことに苛立ったのか、倫平が浴室の扉をいきなり開けた。
倫平が不安そうな表情を浮かべている。
「怒ったんですか?」
「・・・・・」
「了解を得る前に顔射しちゃったから」
「・・・・・」
「すみません、我慢できなくて」
「・・・・・」
「でも、男なら我慢できないの分かってくれますよね?
男ならあんな気持ち良いことされたら、我慢できなくなるの分かりますよね?」
「・・・・・」
「てか、俺達、まだ最後までやってませんよ?」
「・・・もう、お前がイったんだから良いじゃん」
「そういうことじゃないでしょう?」
「オレはもう気が済んだからいい。
また今度な」
「なんですか、それ!?
俺、楽しみにしてたのに・・・」と、不服そうな顔を浮かべた倫平。
「もういいから、ゆっくりシャワーを浴びせろよっ」
「話はまだ済んで・・・」と、倫平が全てを言い終わる前に、眞央は熱湯が出た状態のままのシャワーヘッドを手に取ると、倫平に向けて熱湯を浴びせた。
「うわー!」と、倫平は慌てて浴室のドアを閉めた。
閉めた扉の向こうから、
「もうっ、床がびしょびしょになっちゃったじゃないですかっ!」と、倫平の怒りの声。
倫平は脱衣所の床を拭きながら、ドア越しに問いかけた。
「ホントにまた今度ですよ!」
「ああ」
「来週の火曜日の夜を空けておいてくださいよっ!
俺と店長、また水曜が休みで同じですから!」
「ああ」と、眞央は適当に相槌を打った。
適当に相槌を打ちながら、眞央は自分の思いに考えを巡らせていた。
《顔射ぐらいでオレが怒るわけないだろう。
こっちは生粋のゲイだぞ。
顔射ぐらい喜んで受けて立つわ。
だったら、オレは京和の何にこんなに腹を立ててるんだろう?》
その答えが全くもって見つからない眞央。
今度はそんな自分自身に腹が立ち始めて、「あーっ、もうっ!」と、髪をくしゃくしゃにした。
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