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そして、日は流れて―。
一日の業務を終えた倫平はショップの裏にある喫煙コーナーにやってくると、タバコをふかし始めた。
倫平がタバコを吹かしていると、同じくタバコを吸いに眞央がやってきた。
「お疲れっす」と、倫平。
「お疲れさん」
眞央もタバコを吸い始める。
「知ってます?」と、倫平。
「何?」
「ウチのショップで、今タバコ吸ってるの、俺と店長しかいないって」
「・・・嘘!?
多田は?
あいつ、ヘビスモでしょ?」
「それが、あいつ、彼女が出来て禁煙したんですよ。
彼女の方が恋人になる条件として禁煙することを提示したらしくて」
「へえー」
「そういうのどう思います?」
「そういうのって?」
「愛されてるかどうかを試すみたい行為ですよ」
「良いじゃない」
「店長はやるタイプなんですか?」
「やるよ。
オレは好きになったら染まりたいタイプだから」
「へぇー。
・・・俺はやんないなー」と、首を傾げる倫平。
「知ってる」と、笑う眞央。
「でも、そこまで恋愛にのめり込めるっていうのは羨ましいな。
俺、そこまで人のことを好きになったことがないのかも」
「・・・・・」
「相手なんて他にいっぱいいるじゃないですか」
「・・・・・」
「なのに、失恋しただけで全てが終わったみたいに言う奴、あれ、信じられないですよ」
「・・・・・」
過去に失恋の痛手を乗り越えた眞央は黙って聞いた。
眞央のスマホからメッセージが届いたことを知らせる着信音が鳴った。
「うーん、火曜日か・・・」と、スマホを見ながら口にする眞央。
「トラブりましたか?」
「いや、プライベート」
「夜は大丈夫ですか?」
「何が?」
「俺との約束ですよ」
「へ?」
「俺と約束しましたよっ!
俺も店長も水曜日が休みだから、火曜の夜は空けておいてくださいって」
「そんな約束したか?」
「店長の方から言ったんじゃないですか」
「いや、言った覚えないけど」
「自分で『また今度って』言っておいて覚えてないんですか?」
「ごめん、覚えてないわ・・・てか、火曜の夜は無理だわ」
「急用なんですか?」
「ううん、今セフレから誘い入った」
「ハァ?!
俺がいるのに?」
「へ?」
「だから、俺が先約でしょうっ!」
「いや、だから、そんな約束した覚えないって」
「最低ですね」
「お前にだけは言われたかねえわ」
倫平は明らかに機嫌を悪くすると、タバコの火を乱暴に消してショップに戻っていた。
「なんだ、あいつ・・・」と、倫平の背中越しに呟いた眞央。
しかし、倫平の機嫌を悪くした態度を見て、この前の夜に覚えた腹だだしさがどこかスカッと解消された気分になっていた。
(第三夜へ)
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