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第三夜
眞央と倫平、ふたりの休日明けとなる木曜日が訪れた。
出勤してきた眞央は朝から虫の居所が悪そうな顔をしている。
眞央は営業職の多田を自分のデスクに呼びつけると、
「あのお客様の中古車はこの値段では絶対買い取るなって、オレ、休日中にも関わらず、ちゃんと電話で指示したよな」と、叱りつけた。
更に、
「あの車のレッドは限定色で人気だから高値で売買されるけど、買取の依頼があったお客様の車はイエローで、イエローは全く人気がないから、その価格で買い取ると、ウチが損するぞって、休日中だったのに、理由までちゃんとオレは説明したよな。
ハァー、これは間違いなくウチが大損するパターンだぞ。
どうするつもり?
しっかりしてくれないと、ウチの店が補填することになったら、お前だけじゃなくみんなも給料が持って帰れなくなるんだぞ」と、しつこく叱りつける。
その様子をひっそり見守る事務職の女性社員らがヒソヒソ声で話す。
「店長にしては珍しく長いお説教ね」
「また、店に怒鳴り込んできたあの女性と何かあったんじゃない?」
「えっ、まだ不倫相手と別れてないのかしら?!」
「隠れて続けてるんじゃない?」
女子社員らのヒソヒソ声で話す会話が漏れて、倫平の耳に届いた。
倫平もまた、いつになく不機嫌な眞央の様子が気にかかり、眞央のことを心配した。
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