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昼の休憩時間になると、倫平はいつものようにショップの裏側にある喫煙コーナーでタバコを吹かしていた。 そこに、まだ虫の居所が悪そうな顔をした眞央がやってくる。 眞央もタバコに火をつけると、苛立った様子で吸い始めた。 「なあ・・・お前、いつ空いてる?」と、眞央。 「へ?」 「いつ空いてる?」 「・・・それって誘ってます?」 「・・・・・」 「今は部下と上司の時間じゃないんですか?」 「・・・・・」 「俺達のルールに反してますよね?」 「・・・・・」 眞央は明らかにムスっとした表情を浮かべた。 「・・・なんだよ、その、つまんないイジワル・・・」と、吐き捨てるように小声で言う眞央。 その小声が聞こえた倫平は、 「先にイジワルしたのは店長なんで」と、ムカっとした顔つきで言い返した。 「あ、そうですか。 それはどうもすみませんでしたっ!!」と、嫌味ぽく言い放つ眞央。 「・・・・・」 眞央が珍しく苛立っているようなので、 「来週の火水は連休で休暇を取ってます」と、倫平が先に折れることにした。 「・・・・・」 「そこで良いですか?」 「・・・ああ」 「じゃあ、ずっと家に居るんでいつでも来てください」 「・・・・・」 倫平はタバコの火を消すと、ショップに戻ろうと裏口に向かった。 が、すぐに足を止めた。 眞央の機嫌の悪さがどうしても気になって放っておくことが出来なかったからだ。 事務職の女子社員らが話していた通り、不倫相手と何かあったのかもしれない。 自分との約束をうやむやにして、セフレと会うことを選んだのは、実は不倫相手と会うことを自分に隠したくて、セフレに会うと嘘をついたのかもしれない。 そんな考えが倫平の脳裏を巡った。 「何かあったんですか?」と、倫平が問いかける。 「へ?」 「今晩、メシでも食いに行きます?」 「・・・・・」 「愚痴ぐらいなら今晩でも聞きますよ」 「・・・・・」

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