1 / 6
溺れ 乱れ 蜜地獄 1
「・・・っ待って・・・!!やぁっ・・・待ってって・・・ダメぇ・・・いっちゃ・・・!」
窓から細く長く、月の光が射し込む。
鋭く尖った月光が、それでも淡く部屋の中を照らす。
不要なものを置いていない、殺風景な寝室。
クローゼットとベット脇のチェスト、寝室用の暖色の間接照明は今は消してあるが、月光が大きなキングサイズのベットを照らし出していた。
そのベットの上で、オレは一人の男に組み敷かれて、あられもない嬌声(きょうせい)をあげて、肉欲を貪っていた。
オレの細い躰(からだ)とは比べものにならない躰。
180cmを超える長身に、ジムで鍛え上げたバキバキに割れた腹筋と、力強い手足、それらに似つかわしくない端正な顔立ちの男が、オレの上にのしかかっている。
数年前からオレにまとわりついてきて、うざくて適当にあしらっていたのに、いつの間にか懐に入り込んでて、気付いたら付き合うことになってて・・・オレのことを好きだと愛していると四六時中囁いてくれる。
そんな珀英(はくえい)に気がついたら絆(ほだ)されて、惹かれて、夢中になっていた。
それだけじゃなく、絶対に無理だと思っていたセックスまで、許すようになってしまっていた。
金髪にまでブリーチした、背中の中ほどまである珀英の髪が、今は解(ほど)かれてオレの躰の上を彷徨(さまよ)っている。
長くて赤い舌が、オレの首筋を這いずり回って、胸の方へと降りていく。小さな紅い突起を吸われる。
電撃のような快感が突き上げる。
「いやぁ・・・それやだ・・・!」
反射的に躰を捩(よじ)って逃げようとする。力強い腕に抱きしめられて、押さえ込まれる。
口の中に含んで、舌先でつついて、ねっとりと舐めあげられる。
何度も何度も、乳首とその周辺を吸われて、薄っすらと紅く染まっていく。
珀英に開発されたせいで、乳首を攻められるのは弱くなっていた。
下半身も反応しているのを、珀英はわかっていて、オレの敏感な所を爪先で触れるか触れないかの、ギリギリのタッチで撫ぜる。
「ダメ・・・だって・・・ふあああんっっ」
脇腹を爪先が滑って、躰が勝手に跳ね上がる。
もう達(い)きそうなオレを弄ぶように、珀英はオレのお腹を丁寧に撫ぜ回して、そっ・・・と腰に回って下に落ちて、お尻の割れ目の敏感なところを爪で擦る。
まだ固く閉じている箇所を、指の腹でそっ・・・と優しく撫ぜる。覚えのある快感が、触れられたところから広がって、熱が頭をもげる。
「やぁ・・・もうっ・・・んんっんんっっっ!」
「まだ、早いですよ?」
耳元に低くて心地の良い声が響く。
そこそこ売れているバンドのヴォーカリストで、美声と評判な声だけあって、耳元で囁かれるだけで、腰に甘い痺れが走って、背筋がゾクゾクする。
こいつは、わかっていてそうするのだ。
こうやってオレの反応を見て楽しんでいる。
意地悪。
まだ挿入れてもいないのに、限界になりそうなオレを、珀英が本当に嬉しそうにほくそ笑んで見つめてくる。
何だか悔しくて思わず睨(にら)みつけると、端正な顔で微笑んだまま、後ろの小さな穴に珀英の骨張った長い指が、ゆっくりとズブズブ入ってくる。
知らない間にローションを塗っていたらしく、ぬるぬるに濡れた指はすんなりとオレの中に侵入してきた。
「ああん・・・ちょっ・・・やぁあああん!」
「まだ少ししか入れてないですよ。大丈夫・・・」
指がゆっくりと中に潜り込んでくる。もう何回もされている事なのに、まだ慣れ
ない。
どうしようもなく気持ちいい。そして、恥ずかしい。
シーツを強く握りしめて、躰の奥深くから込み上げてくる快感から逃げようと、必死に堪える。
自分の躰が、コントロールできなくなる瞬間・・・。
不意に珀英がオレの中に入れているのとは反対の手で、オレの腕を掴(つか)むと自分の肩に乗せる。
「緋音(あかね)さん・・・オレにしがみついて下さい。縋(すが)り付くなら、オレにして」
「あああん・・・うん・・・うん・・・もうっもうっ」
珀英に誘導されるまま、逞(たくま)しい首にしがみついて、その首筋に顔を埋める。
何よりも安心できるのに、誰よりも危険な男。いつの間にか、心も躰も奪われていた。
それどころか、感情も習慣も感覚も常識も、味覚も触覚も嗅覚も、オレを構成するもののほとんどが、珀英によって変えられている。
関わっちゃいけない、危険な男。
だからこそ、何よりも魅力的な男。
喘(あえ)ぎながらしがみつくオレの様子を伺いながら、指がどんどん奥に入ってきて、オレのいい箇所(ところ)を執拗(しつよう)に舐め上げる。
珀英に教えられた、何度も何度も味わわされた快楽が、脳みそまで犯しだす。
躰が言うことを聞かない。声も抑えられないし、足もガクガクと震えて止まらない。
内部からの快楽が、腰を伝って背中を駆け上がり、目の奥で弾け飛ぶ。全身犯される。
「ひゃあああぁぁんっ・・・もうっもうっイク・・・はく・・・えっっ!」
「しょうがないな・・・いいよイって下さい」
深い声。耳元で。
優しく。
響く。
珀英の指がオレの勃(た)ち上がったものを、包み込む。そのままカリの部分と裏筋を擦られると、躰がけいれんするようにビクビクと跳ねた。
「・・・イっ・・・やあぁぁぁっっんっ・・・!」
後ろと前と、敏感なところを同時に攻められて、オレはあっさりと珀英の手の中に吐き出してしまった。
躰に力が入らなくて、ぐったりと全身で呼吸を繰り返す。
「いっぱい出ましたね・・・自分でしなかったの?」
珀英が手についたオレの精液を舐めながら、楽しそうに笑いながら言った。
赤い舌が、珀英の大きな手についたオレのを舐めて・・・少し呆れたような表情をする。
それだけなのに、何故か躰の一番奥深くを犯された感覚がする。
珀英はいつもこうやって少し意地悪なことを言う。
恥ずかしさと快感に浸りながら、オレは軽く珀英を睨みつける。
それでもこいつは、嬉しそうに、楽しそうに眼を細めて、オレの全身を舐め回すように、視線で犯す。
髪の毛の先から、足の爪先から、瞳も舌も。本当なら見えていないはずの、躰の奥深くまで、見られている感覚。
恥ずかしさに耐えられず目を逸らした瞬間、両足をいきなり担ぎ上げられて、足の間に珀英の躰が入り込んできた。
「やだ・・・待って・・・ああああんんもうっ!」
オレの両足を肩に担ぎあげて、後ろの穴がよく見える格好をさせられて、いきなり珀英の太いのが侵入ってくる。
慣らされていたので痛みは感じないが、それでも、いきなり太いのが肉壁を割って侵入ってきたら、びっくりして腰が引けてしまう。
思わず腰が逃げようとしたのを見て、珀英は鍛えられた腕でオレの腰をがっしりと捕らえて、離してくれない。
ローションと指で広げられた穴は、珀英のものをずぶずぶと飲み込んでいく。
内部を有り得ない太さのものが侵入りこむ感覚と、じわじわと広がる熱と、深く侵食してくる快楽と、色々なものが。
背筋を駆け上がってきて、おかしいくらいゾクゾクする。
犯して欲しい。
何も考えられなくなるくらい。
常識だの日常だの仕事だの・・・そういうの全部わけがわからなくくらい。
ひどく犯されたいと、思ってしまう。
そんな願望に気づいたのか知らないが、珀英のが、一気に根元まで侵入ってきて、強く腰を叩きつけられる。
何度も、抜けるギリギリまで出して、一気に根元まで。
突き上げられる。
擦り上げられて、オレの弱い所を刺激されて、気持ち良くて。
もっと激しくして欲しいと思う自分がいる。
「あああっんんっ・・・!!っやあああぁっもっとぉ!!いい・・・いいっもっとぉ・・・やぁあ!!」
「緋音さん・・・好きだよ。大好きだよ」
珀英の腰がぶつかる音。
オレの穴から溢れる、ぐちゃぐちゃと濡れた音。
挿入りながら、口吻けする。
唾液と舌が搦(から)みあう、ぬちゃぬちゃと濡れた音。
「・・・奥ぅっ・・・もっと奥っ!!好き・・・もっともっと欲しいっ・・・はくえいぉ・・・!!」
「淫乱・・・最高だね・・・」
珀英が担いでいたオレの足を、更に広げる。
膝の裏を掴んで、ぐいっとオレの頭の上の方まで引き上げる。
容赦なく、広げられた足と、剥き出しのお尻。
そこに激しく叩きつけてくる珀英の腰が、奥の奥まで陵辱して、擦って、堪らなく気持ちがいい。
急に珀英に開発された前立腺の部分を狙って、珀英が少し体勢を変えた。
さっきの深い所から、浅めの所を突いてくる。
もう何度も何度も、こいつによってドライオーガズムを味わわされた。
頭が爆発して、躰が言うことを聞かなくなって、痙攣したようになって、激しい喘ぎ声を出してしまう。
あの感覚は・・・女性が達く時の感覚に近いと言われていて、達きたいけど達きたくないような、強烈な不思議な快感。
オレはドライオーガズムに達っするのが怖くて、珀英の筋肉質な腕に強くしがみついた。
「バカっやだぁああ!!ダメェ・・・そんなのらめぇ・・・やぁだぁっ!!」
「そんなこと言って・・・すごい腰振ってオレの咥えこんでるじゃん」
「言う・・なって・・・ふぁああんっ!!」
「好きだよ。ずっとずっと、好きだよ・・・」
腰は激しく打ち付けてくるくせに、耳元で囁く声は蕩(とろ)けるほどに甘くて、意識が飛びそうになる。
いつの間に、こんなことをするようになったんだろう?
最初は嫌いだったのに・・・何で?
抱かれてもいいなんて、いつから?
抱かれたいなんて、いつから?
オレは、珀英にめちゃくちゃに犯されながら、過去に思いを馳せていた。
ともだちにシェアしよう!