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溺れ 乱れ 蜜地獄 2
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初めて会えたのは、緋音さんの所属しているバンドが初めて東京ドームでライブを敢行した時だった。
緋音さんはギターを担当していて、オレはヴォーカルだから担当は違うけど、それでもオレはずっと緋音さんのファンだった。
プレイスタイルや、中性的な美貌や、音楽へのこだわりや、外見も声も仕草も性格も全部エロいところとか。
ずーっと好きで憧れて、少しでも近づきたくて、オレもバンドを始めて。
緋音さんには及ばないけど、少しづつファンも増えて、日本武道館でワンマンライブができるようになった頃だった。
緋音さん達の東京ドームでライブが決定して、色んな人にお願いして、やっとなんとか楽屋に挨拶に行ける事が決まって。
関係者席で観れる事になって。
当日は緊張しすぎて何を話したのか、むしろ話したのかどうかすらわからないくらいで。
ただただ、綺麗でカッコ良くて、色っぽくて、手を伸ばせば届く距離にいるのが信じられなくて。
攫ってしまいたくなった。
閉じ込めて、誰にも見せたくなくなった。
オレのことだけ、見ていて欲しくなった。
口吻けて抱きしめて目を潰して頬に触れて舐めて髪を撫ぜて手を繋いで脚を切り落として舌を搦めて躰を繋いで
全部、欲しくなった。
それから、うざがられても気づかないフリしてメールして、ライブとか直接会える機会は無理してでも会いに行った。
そうやって少しずつ、少しずつ、時間をかけて懐に入り込んだ。
電話に出てもらえるようになって、二人っきりで飲みに行けるようになって、ライブとかイベントに招待してもらえるようになって、家に上げてもらえるようになって、触れても怒られないようになって、合鍵もらえるようになって。
キスを、しても怒られなくなったのは、5年経ってからだった。
5年が長いのか短いのかわからないけど、5年間の努力が報われた瞬間だった。
ただの友達や後輩だと思っていたら、キスをした瞬間、ぶん殴られていただろう。
でも、緋音さんは、殴りはしなかった。
性的な意味だとわかっていたはずなのに、少し困ったように瞳を曇らせて、俯(うつむ)いただけだった。
あの時、拒絶されなかったから。
困っていても、全身で拒絶したり、罵ったりしなかったから。
オレはその時にきちんと告白をして、その後も執拗に好きだと言い続けた。
それこそ毎日毎日。毎日何十回も。
考え得るありとあらゆる褒め言葉を囁いて、心の底からの愛情を嘯(うそぶ)いて。だって仕方ない。
どうしても欲しくなったから。
口吻けて抱きしめて目を潰して頬に触れて舐めて髪を撫ぜて手を繋いで脚を切り落として舌を搦めて躰を繋いで
閉じ込めたいから。
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