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第2話

 藤馬と映画に行くことになった。当然待ち合わせはせず、家を出るところから一緒ではあるが、デートのようだ。気は進まなかったが、誘われた時ちょうど見に行きたい映画をやっていたので、行くことにした。というか藤馬からすれば、雅の好みの映画が上映されたのを見計らって誘ったのだろう。  二人で出掛けることは今までもあったが、デートのようだ、と思ってしまうのは、多分藤馬の気持ちを知ってしまったからだろう。  映画館につくなり、「ちょっと待ってて」と言い残されたので、雅は上映予定のチラシを見て待つことにした。 (なんだかんだ言って、あれから何回もヤッてるんだよな。不本意ながら、藤馬以外のやつとはやってないし……) 「あ、これ面白そう」  気になったチラシを何枚か手に取ったところで、藤馬が戻ってきた。手にはジュースや軽食ののったトレーを持っている。 「ポップコーンとジュース買っておいた。行こう」 「あ、ああ。サンキュー」  スクリーンに入って座席につくと、藤馬は二人の座席の間にトレーを置いた。まだ照明の落としていない場内では、広告が流れていた。 「いくら? 半分出すよ」 「僕が勝手に買ってきたんだからいいよ。誘ったのも僕だし」  雅は財布から千円札を一枚抜き出すと、無理やり藤馬の手に握らせる。 「明らかオレのほうが稼いでんだから受け取っとけ。つーかオレ男だから、女の子みたく優しくしてくれなくていいんだけど?」 「僕が優しくしたいんだよ」 「……あっそ。勝手にしろ」  重い物をさっと持ってくれたり、さりげなく道路側を歩いてくれたり。おしつけのないさりげないやさしさ。藤馬は理想的な彼氏だった。  もし雅が女だったら、だが。  場内の照明が落ちる。藤馬が耳元でこそっと囁いてきた。 「始まるね」 「うん」  雅はスクリーンを眺めながら、ジュースをストローで吸い上げる。 (不毛だな。こいつも)  もし雅が女だったら。こいつの恋は上手くいったかもしれないのに。 (まあどっちにしてもだめか。オレどうせビッチだもん)  一人の相手と付き合う、なんて真似、自分が女であってもできそうにない。ましてや専業主婦なんて絶対無理だ。 (結婚なんて一人の相手としかやれない地獄みたいな契約だよなー)

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