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第6話
入社して一週間。
瑞は涼真を、すっかり信頼していた。
大手商社から転職してきた理由を、しつこく尋ねることもない。
αだ、βだ、Ωだ、と差別することもない。
前社で身につけたスキルは、ちゃんと認めてくれる。
そして何より、優しい。
今日だってほら、一人でチーズケーキを平らげてくれた。
だから、今まで誰にも話したことのない秘密を、打ち明けた。
「ストレス感じたら、お菓子を作る?」
「はい……」
「食べる、んじゃなくって、作る?」
「ええ。作ってると、無心になれるんです。没頭して、嫌なこと忘れられるんです」
涼真は、瑞を不憫に思った。
今日ケーキを作って来たということは、転職してきて間もないのに、もう何か嫌なことがあったのか。
「お菓子作りもいいけどさ、悩みがあったら何でも俺に言ってね。相談に乗るから」
「すみません、ありがとうございます」
甘いはずのケーキを少し塩っぱく感じたのは、白河の涙が混じってたからかな。
そんな風に考えて、涼真はコーヒーを口にした。
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