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第16話
休日、瑞は早起きをした。
日の光で明るいキッチンで、涼真のためにチェリーパイを作った。
パイ生地もカスタードクリームも、お手製だ。
市販のもので簡単に済ませる気には、なれなかった。
チェリーだけは季節的に手に入らないので、缶詰だが。
「武藤さん、美味しいって言ってくれるかな」
いい匂い。
オーブンから漂うパイの焼ける香りを、胸いっぱいに吸い込んだ。
ああ、こんなに楽しくお菓子を作るのって、久しぶり。
「武藤さん……」
胸いっぱいに吸い込んだのは、何もパイの匂いだけじゃない。
いつの間にか、胸は涼真でいっぱいになっていた。
瑞は、ようやく恋を自覚した。
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