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第17話

「美味い……」  涼真は、瑞の心のこもったチェリーパイを噛みしめた。  塩っぱくない。  怒りや悲しみに任せて作ったお菓子じゃない。 「今までで、一番おいしいよ。ありがとう」 「どういたしまして」  会話も、明るいものばかりだった。  新参者の困惑も、Ωの悲哀も無い、健全な話題。  早く、武藤さんとこういう話をすればよかった。  そうすれば、僕はもう少し余裕のある毎日が送れていただろうに。  そんな風に、瑞は考えていた。  そして、考えていることがもう一つ。  いや、実は早くそれを言いたくって仕方がないのだが。  言うには、少し勇気が必要だった。

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