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第1話

 確かに部屋までついていった。  でも、まさか本当にこんなことされるなんて。    一緒に映画を見ていたはずだった。    確かに緊張しすぎて観てなんかいなかったけど、肩を抱き寄せられたところまでは、確かにこれくらいはあるかなって思ってたけど。  シャツをまくり上げられて、胸を弄られるのは想像していなかった。  いやしたなかったわけじゃない。  そんないきなりなんて。  甘い言葉も何もなく。  膝の上に身体を引き寄せられて、背中から抱き込まれて、掌で胸を撫でさすられる。    熱い掌の感触におもわず身体が震えた。  そんな風に触れられたのは生まれて初めてだったから。  人の体温を胸の先で感じることなんてなかった。  「感じてんの?カワイイ」  軽い声に怯える。  この人が男も抱けると言う話は聞いてた。  男でも、女でもイける、遊び人だと。  だから、それほど親しくないのに誘われたのについてきた。  興味があった。  男の身体に興味を持ってしまう自分が何なのかを知りたかった。    でも、それはあくまでも妄想とか想像とかの範囲だったと今わかって、まだそんな覚悟はないこともわかって。  だから、現実にこの人が触れてきて、そこにいかにも遊びな感じが伝わると怖くなった。  「お、オレ、やっぱり・・・」  オレは胸を撫で回す手を掴んで止めてもらおうと思った。     「ダメだよ・・・今さら。分かってて、期待して来たんででしょ?」  首筋を音を立てて吸われた。  熱い。  その感触にまた身体が震えてしまう。  「カワイイね。したことないんでしょ?自分が何なのか知りたかったんでしょ?」  耳を噛まれた。  歯が耳朶に食い込む感触、噛みながら舐められる感触に身体がまた熱くなる。  「自分の身体がどうなるのか・・・知りたいんでしょ?」  耳の穴まで舐められた。   寒気を感じた時のようにまた身体が震える。  身をよじって逃げようとした。  怖くてたまらなくなっていた。  でも、両方の乳首を背後から強く摘ままれて、その痛みに逃げようとした身体が硬直した。  「痛い・・・」  悲鳴をあげたら、優しく指先で撫でられた。  「痛かった?ごめんね。ほら、優しくしてあげる」   囁かれ、指先が優しく乳輪を撫でていく。   優しくソフトに、掠めるように乳首をも撫でながら。  また身をよじったのはもう逃げるためではなかった。  気持ち良すぎたのだ。  吐息が出た。  低く笑われた。     「感じやすいね」  そう言われ、顔に血が上る。    片方の乳首を指でつぶされ回されながら、もう片方の手はゆっくり身体を撫でて、いく。  薄い腹、脇腹を撫でられ、指でなぞられた。      「んっ」    身体がピクンと反応してしまう。    ズボンのボタンが外されチャックをおろされ、もう半ば勃ちあがったそれを取り出されても、抵抗できなかった。  指で確かめるように、しごかれた。  「勃ってるじゃない」    笑われた。  泣きそうになって顔を背けた。    その首筋をまた舐められる。  「でも、使いたいのは・・・ここじゃないんでしょ」  その声が怖かった。  だってそうだったから。  ドサリ  ソファに押し倒された。  うつ伏せにされ、ズボンを下着ごとおろされる。  さすがに抵抗しようとしたら、背中にのしかかれたまま、胸を撫でながら、半ば勃ったそれを扱かれた。    逃げようと身体をよじればよじるほど、その掌に、胸や性器を押し付けてしまうようになってしまう。  笑われた。  逃げようとする感触さえ楽しまれているのだと知った。  尻に硬くなったものを押しつけられ擦り付けられる。  ずっと楽しそうに笑っていた。  指は淫らに動く。  扱かれ、胸を弄られて。  そして裸の尻に布ごしにある硬いモノが擦り付けられて主張してくる。   ここにあるんだと。  「いやぁ・・・止めて・止めて・」    泣いても、性器はどんどん濡れて堅くなっていくし、乳首は芯を持っていく。  逃げるはずの身体の動きが、まるで欲張るように押し付ける動きになってことに、自分では気付かない。    はじめて触られる他人の手の気持ち良さにもう溶かされていた。    ああっ   ああっ、  強く摘ままれて、強く擦られて、達してしまった。  生まれて初めて他人の手で。    身体を強ばらせ、迸らせた後、身体の力が抜けた。  ソファにくたりと身体を投げ出した。  息が荒い。    「良かった?」  囁かれた。  返事はしなかった。  その通りだったから。    そのまま力が抜けた身体の尻をもちあげられ、抱えられるようにして、そこを舐められた。  後ろの穴を。  「いやぁ・・・いやぁっ」  羞恥に泣き叫ぶ。    でも、力の抜けた身体はその感触を欲しがった。  そこを熱く濡らしていく、その感触を。  熱いヤスリ。  こそげるような。  熱い焼けた鉄。   焼き付けるような。    快楽は鮮烈すぎた。   「ああっ!!ああっ!!」  涎を流して感じてしまう。  出したはずのソコがまた堅く勃ちあがる。   触れられてもいないのに。  中にまで舌をねじ込まれ、中まで焼かれて・・・・       「いやぁぁ!!」  悲鳴を上げながら、また迸らせた。  触れられていないのに。  「感度いいね。最高」  その声の軽さが心をおかしくする。  この濃厚な愛撫。  この怖いほどの快楽。  この逃げだしたいほどの恐怖。  それらがこの男には大したことではないのだ。  でも、もう逃げることを止めた。  もう・・・行くしかなかった。  最後まで。  「納得した?・・・じゃあしようね。最後まで」  クスクス笑われ、そこに指を挿れられた。  舌で溶かされたそこは、指を容易く受け入れた。  息をはきながら、広げられることに耐える。  その異物感を消すように、乳首を弄られ、その感覚に酔った。    「乳首好き?」  軽く聞かれる。    でも、その言葉の軽さとは違ってその指は執拗だ。    人差し指と親指ですりあわされ、指先で潰され、回される。    「んっ・・・・ああっ・・・好きィ」  答えていた。  「だよね。また勃ってるし。ヤらしい身体だね。カワイイ」  囁かれる声はいくら優しくても何の意味もない。  でも、いつの間にか服を脱いだその素肌を背中に感じて、乳首と尻をいじめられることに、身体は夢中になっていた。  喘ぐ。  背中を舐められ、また身体が震える。  先から零れているのがわかる。    「早く・・・早く・・・終わらせてぇ」  泣いてしまった。  気持ち良いけど・・・終わりが見えないのが怖くて。  たまるだけの快感を吐き出したかった。  「おねだり?いいねぇ」  楽しそうに云われた。  そして、腰を持ち上げられた。  動物のように四つん這いにされた。  そして。  濡れた硬いものを後ろの穴にあてがわれる。     グリグリと押し付けられる。  楽しむように。  終わらせてくれるモノだとわかった。  もう、ここから逃げたかった。  ずっと、甘く煮詰められるだけの、熱く溶かされ続けるだけの場所から。  「挿れてぇ!!」  叫んだ。  自分から押し付けて、尻を揺らした。  軽い笑い声。    玩具を与えられた少年のような声。  そして。  手加減なしに貫かれた。  そこからは甘さはなかった。    痛い痛い  いやぁ  痛みに泣いた。  でも構わず突き上げられた。    「大丈夫、キレてないから。気持ちいいね、お前の中」  笑いながら言われた。  熱い焼けた鉄の棒が引き裂き、貫く。    許して、お願い  本気で泣いた。  「気持ちいい、いいなぁ」  そんなこと気にしてない声がする。  引き裂かれ、貫かれ続けた。  終わりを。  終わりを。  ただ求めている時に、それがきた。    身体が痙攣した。  それは痛みより激しかった。      「あ、いいね。中覚えたね」    初めて余裕ない声がした。  でも、自分も叫んでいた。  わからない何かのせいで。  またキた。  頭が白くなった。  今度はそれが終わらなくなった。  「ああっ・・・いやぁ・・・いやぁ・・・」     怖くて泣き叫んだけど、誰にも助けてもらえなかった。  縋ることさえできない。    ソファに爪を立てて叫ぶだけ。  永遠に落ちる穴に落とされたようだった。  落ちて加速して、落ち続ける。  「それ、いいってことだよ・・・君、最高・・・」  突き落としたその人が笑った。  でも、その声も苦しそうだった。  この人も堕ちてる?  2人でしてるのにまるで一人で落ちていくみたいなコレの中を。  ふと思った。  一人ぼっちだ。  一人・・・。  甘く落ちて、貫かれて、焼かれた。  熱いモノが何度も注がれた。  意識を失うまで許されなかった。  いや、失っても許されなかったのかもしれない。  道具にされる快楽。  道具にする快楽。  それは、でも純度の高い快楽だった。  目が覚めた。  ソファに寝かされていた  身体はキレイにされていた。  着せられた服も整えられていた。  ソファの下に座って、その人は途中までだった映画の続きを見ていた。  「目、覚めた?飲む?」  ミネラルウォーターのペットボトルを渡してくれた。  呻きながら起き上がる。  身体の節々が痛んだ。  「どうする?、観ていく?終電なくなるけど」  尋ねられて、帰れと言われてるのがわかった。  「帰ります」  フラフラと立ち上がる。  「そう」  笑顔には何の意味もない。  でも、玄関までは送ってくれた。  「・・・またおいで」  出ていく時にそう囁かれた。  身体の奥が疼いた。   この人は奥にまで入り、そこに放ったのだ。  注がれたそこが熱くなる。  「・・・また来ます」  そう答えてしまった。  その人は笑った。  意味のない。  優しい笑顔で。  でも、きっと。  欲しくなる。  END               

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