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エトランゼ②
「ったく、あんたもげんきんな男ね。かなちゃん目当てでピアノ続ける事にしたんでしょ」
「だって、とても母ちゃんと同い年とは思えない綺麗さだったぜ」
「お黙り!それより幸人君はどう?学校で上手くやってる?」
「え?知らないよ、そんな話さないし」
「冷たい男ねえ、私の同級生の息子さんだから気にかけてやってって言ったでしょ。全くもう」
朝から騒々しく言い争う哲太と母を穏やかに眺め、祖母がニコニコしながら言ってくる。
「奏恵ちゃん懐かしいわね。小さい頃からお人形さんみたいに可愛らしくて、よくうちに遊びに来てたわよね、息子の幸人君にも会ってみたいわ。哲っちゃん今度うちに連れてきなさいよ」
「あー無理無理、仲良くなれそうにないもん、全然タイプ違うし」
「タイプなんて話してみなきゃわからないでしょ。引っ越してきたばかりなんだから声くらいかけてやりなさいよ」
「大丈夫だって、あいつ女の子にモテモテだし」
「なるほど、確かにあんたとタイプは違うわね」
「はあ!俺は別にモテたいと思ってないし!」
「はいはい、強がり強がり」
実際、その時は本当に、殆ど話した事はなかったのだ。色素の薄い髪に、日本人と西洋人の美点をミックスしたように中性的で綺麗なルックス。少子高齢化で1学年2クラスしかない田舎町の小学校に、そんな転校生が来たら、女子達が色めき立つのも無理はない。
そもそも、ピアノを本格的にやっていて、指を怪我できないからと、体育を見学するような見るからに繊細な美少年幸人と、奏恵さん目当てでなんとなくピアノを続けているだけの、ヤンチャで身体を動かすのが大好きな哲太とでは、気が合う要素が一つもなかった。しかし、思わぬ事がきっかけで、幸人と哲太の距離は、深く近づく事になる。
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