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第7話 初めての夜

二人とも一杯ずつ飲んで、『ペルセウス』を後にした。 繁華街を歩いていると、急に環さんが俺の腕を引いた。 「おい陸、ちょっとこっち来い」 人目を避けるように建物の隙間に引っ張り込まれる。 環さんは身を屈めて俺の肩を掴むと、軽く、ごく軽くキスをした。 柔らかな香水の香りが俺を包みこむ。 「どうだ、後悔してないか?」 目を閉じる間もなく、ただただ目を丸くしている俺に、環さんが至近距離でにやりと笑う。 俺は慌てて首を横に振った。 「後悔なんか」 「いい子だ」 俺の返事を聞いて、そう呟いた環さんは、梳くように俺の髪に指を通して頭を引き寄せ、もう一度キスをした。 今度は深く、深く。 口内に残った微かなアルコールが、香り高いブランデーのように酔わせてくる。 あ、これは、やばいかも……。 環さん、キス上手すぎです……。腰が砕けそうっていうか、なんというか。その。あの。 かなりエロいやつですよね、これ。 思わず環さんのワイシャツを掴んでへろへろになった俺に気づいた環さんは、唇を離して笑って俺を支えてくれた。 「おいおい平気か?これくらいで音を上げられちゃ、俺は物足りねーぞ」 「だ、大丈夫です!ただ……」 「ただ?」 俺は頬が熱いのを自覚しながら俺は環さんの胸に顔を押し付けた。 「お手柔らかにお願いします……」 途端に環さんは爆笑した。 「駄目なんじゃねえか。やっぱ陸お前面白いわ。わざわざ教育係買って出たかいがあったってもんだ」 環さんは笑いながら俺を抱きしめてくれた。 「いい子に育ってくれて嬉しいよ。覚悟しろよ、可愛がってやるからな」 俺は環さんの腕の中で頷くのが精いっぱいだった。 その後の俺たち?やだよ恥ずかしい。教えないよ。 これで勘弁して。 二人は幸せに暮らしましたとさ、めでたしめでたし。

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