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第4話
「なあ、明紀はさ。本当に運命の番って信じてないの?」
「うーん。実際周りにそんなカップルいないしね。どうしたの急に」
「いや、今日の見合い相手が言ってたんだ。運命の番を探してるって」
運命の番というは簡単にいうとアルファにとって最高に相性のいいオメガという意味だ。
この世界のどこかに自分の運命の番はいるらしく、運命の番のフェロモンは他の誰より甘く感じたり、発情期にはまるで薬でもキメたようにお互い興奮するらしい。
しかし医学的な証明はされておらず、付き合いたてのカップルは自ら「私たちは運命の番」などと自己紹介したりするが、その翌週に別れていたりもする。
「それマジで言ってきたの?そのお見合い相手、変人じゃん」
「変人なんかじゃない。かっこいい人だったよ。俺より背も高かったし」
俺の言葉に明紀が目を丸くした。
「珍しいじゃん。瑞樹が見合い相手褒めるなんて」
「いや、だって本当にかっこよかったし」
俺は自分の頬が熱くなるのを止められなかった。
今日の見合い相手、成澤 貴一(ナルサワ キイチ)は22歳の俺より7歳年上で、その若さで社長だった。
「父親が経営しているところの子会社を一つ、任されているだけだけどね」
そう言いいつつも成澤からは隠せない育ちの良さが滲み出ていた。
両親ともにベータでいわゆる中流階級の家庭で育った俺と、普通なら交わらない人間だろう。
しかし俺はそんなことよりも成澤の身長に惹かれた。
友人の明紀も含めて、俺の通う大学のオメガ達の身長は皆150㎝台だ。
俺が見合いでもまず言われるのが「本当にオメガ?身長高いねえ」だ。
おまけに不細工ではないものの、甘さのない容姿をしているせいで、時に俺はアルファにさえ間違えられた。
可愛いオメガを期待していた見合い相手にはいつも会った瞬間、がっくりと肩を落とされるのが常だった。
でも成澤さんはそんなことはなかった。
落胆したそぶりも見せずにもちろん俺に「本当にオメガ?」なんて馬鹿な質問はしなかった。
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