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第5話

「まあ、アルファがかっこいいのは当たり前だよね」  明紀はそう言うとバーで酒を注文していた30代くらいの男にウインクをした。整った容姿からその男はアルファのようだ。  男が明紀に微笑みかける。 「何飲んでるの?」  男の耳元に唇を寄せ、明紀が答えようとする。 「俺、あっち行ってる」  俺は窓際に置かれた一人用の椅子に座り、足を組んだ。  俺はこういう飲み会でオメガにアルファと間違えられて告白されたことはあっても、明紀のようにベータやアルファから声をかけられたことは一度もなかった。  だって可愛くないし。   ガラスにぼんやりと写る自分のストイックと評される容姿を見て、俺はため息をついた。  高層階から見える夜景は人工的な輝きを放っている。  それを眺めているとふいに目の前の景色が滲んだ。  吐く息が熱くなり、体が震え始める。  発情期(ヒート)だ。  予定だと二週間先のはずだった。三か月に一度、常に予定日きっちりにくるせいで抑制剤の持ち合わせすらない。 「ねえ。大丈夫?」  顔を上げるといかにもオメガという感じの可愛らしい男の子が、心配気にこちら見ていた。 「ヒートなんでしょ?」  声をひそめて聞かれて、俺はがくがくと頷いた。 「こっちに空いている部屋があるから、休むといいよ」  そう言われて手を引かれ、マンションの一室に連れていかれる。  男の子は部屋の中央にあるベッドに俺を寝かせると「抑制剤持ってくる」と出て行った。  助かった。  酒の入ったアルファやベータのいる場所で、ヒートになったことがバレたら集団でまわされたって文句は言えない。  自分の迂闊さに歯噛みする思いだった。  その時、部屋の扉が開き、ベータらしき男が二人入ってきた。

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