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第38話
貴一さんが剥きだしの俺のうなじをべろりと舐める。
「瑞樹。お前は俺の物だ」
貴一さんの言葉に俺の体が震えた。
貴一さんが俺を四つん這いにして突き入れる。
「好きっ、好きだよ。貴一さん」
「瑞樹っ」
貴一さんが歯をたてて俺のうなじを噛んだ。
目の前が一瞬真っ白に染まり、俺の屹立からぽたぽたと水っぽいものが漏れる。
貴一さんはそのまま腰を振ると一番奥で体を震わせ、大量の熱を撒いた。
二人でどさりと横になると、俺は体を反転させ、貴一さんに抱きついた。
「愛してる」
泣きながらそう言うと、貴一さんが俺の体をぎゅっと抱きしめた。
荒い息を吐きながら、貴一さんは俺の両手首をベッドに押さえつけ、正面から突き入れる。
キスをしながら、激しい腰つきで俺の内部を蹂躙し始めた。
「ああ、いい。いい、あっ、ああっ」
喘ぎながら、お互い本能をぶつけあっている最中でさえ、「愛している」と言ってくれない貴一さんに俺は少しだけ寂しさを覚えた。
夏の日差しが痛い程照りつけている。
俺はタオル地のハンカチを取り出すと、額の汗を拭った。
まだ駅から五分しか歩いていないというのに、もうタオルはぐっしょりと汗を吸って湿っている。
待ち合わせ場所の喫茶店が見えてきた。
ガラス張りの内側から目当ての相手が手を振っている。
店内に入ると、途端にクーラーの冷たい風が吹きつける。俺は半袖のシャツから出た二の腕に鳥肌をたてながら、息を吐いた。
案内しようとする店員を断り、窓際の席に進む。
「ごめん。遅れた」
「ううん。時間、ぴったりだよ。それより体大丈夫?」
俺は明紀の言葉に微笑むと、足元が見えないくらいにせりだした自分の腹部に手をやった。
「うん。順調に育っているよ」
その言葉を聞いて、明紀も俺と同じように微笑んだ。
貴一さんの番になった夜から数か月して、俺の妊娠が発覚した。
ヒートの時の受精率は高いとは聞いていたものの、こんなすぐに妊娠してしまうとは思いもしていなかった。
貴一さんに告げると、驚愕の表情を浮かべた後、跪いて俺の腹にいきなり耳をくっつけた。
「何してるの?」
「いや、動いたりとかそういうのを感じられないかなって……」
「まだ妊娠初期だから、気が早すぎるよ」
そう言って笑うと、貴一さんは恥ずかそうに立ち上がり、俺を抱きしめた。
「なんていうか、ありがとう。それとこれからは一人の体じゃないんだから無理しないで欲しい」
「うん。色々マイペースにやってこうと思う」
そう言う俺を貴一さんは甘く見つめた。
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