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第37話

 でも、貴一さんはそんな自分の行動が嫌だったのかもしれない。  俺は余計なことをしたかもしれないと、気詰まりで立ち上がった。 「どこに行く?」  貴一さんに腕を掴まれた。 「アフターピル、飲んでおいたほうがいいかなって」  俺の言葉に貴一さんは俯くと、顔を上げた。 「瑞樹。さっきのセックス嫌じゃなかったか?怖い思いしたんじゃないか?」  俺は首を振った。 「全然嫌じゃなかった」  俺は貴一さんの目をまっすぐ見て告げた。 「でも俺、乱暴だったろ?」  俺は貴一さんの隣に座ると、その頬を撫でた。 「俺から抑制剤なしでセックスしたいって言ったんだよ?貴一さんに本能のままに俺を求めて欲しくて」  俺がそう言うと貴一さんは首を振った。 「俺、抑制剤無しでセックスしたとしても自我を保てる自身があった。瑞樹の香りはどうしようもなく良い匂いだけれど、俺、母を襲ってから、自分をコントロールできるよう色々訓練とかしてきたし。でも全然駄目だったな」 「ごめん。俺が突然、貴一さんの気持ちも考えずに身勝手なお願いをしたから」 「いや、怒ってるとか後悔してるとかじゃないんだ。……こういう話は聞きたくないかもしれないけど、今まで抑制剤なしで何回かオメガの子を抱いたことはあったんだ。でも冷静だったし、相手のうなじを噛もうとしたこともなかった。俺は自分がアルファとしてどこか欠陥があると思っていた。運命の番を探していたのも、そういう自分が変われるかもしれないと考えたからなんだ」  貴一さんがふいに手を伸ばし、俺のうなじを撫でた。 「瑞樹、お前を俺の番にしてもいいか?」  そう問われて俺は目を見開いた。  こくりと頷くと、大粒の涙が俺の頬を滑り落ちていく。 「泣くことないだろ」 「だって俺は貴一さんの運命の番じゃないのに」 「そうでなかったとしても、俺が我を忘れるくらい興奮したの分かってるだろ?」  貴一さんが俺を抱きよせ、優しく背中を撫でてくれる。 「アフターピルも飲まなくていいよ。瑞樹さえよければ、俺の番になって子供を産んで欲しい」  二度目の嬉しい驚きに俺の涙腺が決壊した。 「これは夢?」  俺の問いに、くすりと貴一さんが笑う。 「夢じゃないよ」  貴一さんが俺に口づけし、俺の首に両腕を回した。  カチリという音がして、首輪が外れる。  貴一さんがそれをベッドの下に放り投げた。

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