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第40話
「食後のデザートはいかがしますか?」
店員がパスタを食べ終わった俺の目の前にメニューを差し出す。
「やめとく?」
明紀が俺を気にして言う。
「これくらいは、平気でしょ。かぼちゃのタルトください」
「お連れ様は?」
「僕はもうお腹いっぱいなので」
店員が笑顔で一礼し、去っていく。
「いや、でも二人分だしさ」
俺はじっとこちらを見つめる明紀に、言い訳がましく言った。
俺は双子を妊娠していた。
そのせいかオメガの男性型ではそこまで大きくならないと言われている腹も臨月に近いとはいえ、巨大なすいかを入れているように丸まるとしている。
「あっ、明紀。ごめん。俺そろそろ行かないと」
タルトを完食した俺は腕時計を見た。
「うん、分かった。次会う時は双子のママになった後かな」
そう言う明紀に俺は微笑んだ。
「そうなるように無事産まれてきて欲しいな。じゃあ、また」
俺は店をでると、近くのデパートに向かった。
貴一さんの両親に妊娠を告げると、びっくりするほど喜んでくれた。
お義父さんが「私は欲しい物が分からないから、これで好きな物を買いなさい」と言って黒いクレジットカードを差し出してくる。
「いえ、そんな」
さすがに受け取れないと、首を振ると、目の前でさっとカードが奪われた。
「あなた、ありがとう。早速これでベビー用品を買いに行きましょう。孫の為に嫁と買い物をするのが昔から夢だったの」
お義母さんがブラックカードを片手に、にこりと笑って言った。
それからお義母さんと俺は何度も一緒に買い物に来ていた。
お義母さんは貰ったカードで毎回高級なベビー用品をバンバンと躊躇なく買い、時々自分の洋服なども買っていた。
いつも通り買い物を終え、喫茶店でお茶を飲んでいると、お義母さんが言った。
「たまには赤ちゃん用品じゃなく、瑞樹ちゃん、自分の買い物もすべきよ」
「でも今、僕、お腹こんなですし」
それに通常時であったとしても自分の服などを買うなら、こんな高級デパートではなく、近所の量販店で十分だと俺は考えていた。
「アクセサリーなら、お腹のこと気にしないで着けられるじゃない。あとで、宝石売り場のぞいてみましょう」
「宝石なんて、僕は本当に大丈夫です。」
慌てて言う俺を、お義母さんがじっと見る。
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