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第1話

 これは、棘で出来た鳥籠だ……  部長の唇の右側が微かに歪なのは、いつもそちら側を引き上げて笑う癖のあるせいだ。  満面の笑み……なんてものじゃなくて、にやりとしたどこか皮肉さを感じさせる笑い方をする。  好感度が高いかどうかは別として、それでも笑顔な分だけこの無表情よりはいい。 「   ぅ、あっ……っ」  圧し掛かられる重さに背骨が軋む。 「足を自分で持て、拡げろ」    質素なビジネスホテルの室内灯の光を背負った男はそう言って更に腰を押し進めてくる。  その無表情からは情事中だと言う雰囲気が欠片もなく、僅かに赤く染まっただけの目尻が体の興奮をオレに教える。 「ぅ っは……ぃっあっィ あっ」  返事も、男の与える律動によって出た喘ぎに紛れて届いたのかは定かではなかった。  汗と飛び散ったローションで滑る内太腿に手をやり、ぶるぶると震えるそれを犯されやすいように拡げる。男のオレがとるにはあまりにも羞恥心を煽る姿にめまいがしそうになった。 「あああっ」  ぐぢゅんっ……と、骨を伝って粘液が激しく掻き混ぜられる音が脳に響く。  一際奥を穿たれて内臓が悦んで蠢いたのが分かった。  オレ自身の体なのにオレのあずかり知らない所で男の精が欲しいと絡みついている。 「ぅっ……う …… っ」  喘いでいるはずなのに嗚咽が漏れる。  深く深く侵蝕されて喜ぶこの体が堪らなく疎ましかった。

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