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第5話

「……お願い、しま……」  恐怖で力の入らない手で部長のスーツに縋り、繰り返し首を振る。  いい年をしているのに、溢れ出した涙を止めることが出来ずに顔を歪めた。  みっともない姿だったろうと思う、実際に部長はその姿を見て呆れたのか何も言わずに立ち去ってしまった。  そしてそのまま、特に何があるわけでもなかった。  びくびくと腰が震える。  ナカが蠢き、部長のモノを扱いて苦い水を飲み干そうとしている。 「戻ってこい」  軽く頬を叩かれ、達した衝撃で意識がぼんやりしていたことに気が付いた。 「ぶ、ちょ……」  息を切らしながら視線を巡らせると、溜まっていたらしい涙が零れてこめかみを伝う。  そのくすぐったさを拭おうとした所を止められ、部長の唇が指先を食んだ。 「お前は、泣き顔が良いな」  熱く柔らかな唇の奥の歯が僅かに皮膚に食い込む。  すぐ下に骨のある薄い肌はじわりとした痛みを訴えたが、それですらイッた体には毒のように快感をもたらす。  「は、ぁっ  ……っン、それ  」  更に快楽に落とされるのを嫌い、身を捩って逃げを打つも頭を押さえつけられてそれもできなくなった。  情事に耽っていると言うのに乱れのない部長に、何とも言えない悔しさが沸き起こる。  自分はここまで乱され、翻弄され、以前と全く違う体に作り替えられたと言うのに、この男はオレ達が関係を始めてからも態度や行動に変化と言うものを見せた事がなかった。  

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