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ー数ヶ月前ーー
「京さん」
職場の可愛い後輩に恋人ができた。
数年前から想いあっていた2人が再会を得てやっと付き合い始めたようだ。
「京さん」
嬉しい半面、子供が自分から離れていき少し寂しい親心のような。複雑な心境。
「きょーさん??」
「ああ。…ごめんごめん。」
僕の顔の前でヒラヒラと手のひらを動かし、キョトンと僕を見つめていた噂の僕の可愛い後輩。
どうやら何度も話しかけていたが僕は考え事で頭がいっぱいで、全く気づかなかったらしい。
君のことを考えていたんだけどね。
さらさらの艶のあるその髪を撫でると、普段表情の少ない君が僕に微笑みをむける。君の恋人がこれを見たらまた妬くんだろうな。とかなんとかそんなことを新たに考えてた。
「どうしたの」
「今日の飲みにアイツ連れてってもいいですかね」
罰が悪そうな顔をして、首を傾げて見せる。
少し前の君より随分感情が表に出るようになったなぁ。と感じる。
アイツとは例の恋人、夜野のことだ。
きっと僕と2人で飲みに行くことを伝えたら暴れでもしたのだろう。想像がつく。
そんなアイツも僕にとって可愛い後輩なのだけど。君への想いが強すぎるほどに伝わってきて、初対面の時からとてもいじりがいのある子だ。
ここの職場へ入ってきた当初は意地悪ばかり言ったものだ。
「うん。いいよ。連れておいでよ」
ばちばちの敵意や嫉妬心を向けられて、僕に懐く君を僕から引き離すのに必死だった。
君は鈍感なのか、わざとなのか、そんなアイツに気づかないのだ。
アイツもアイツで大したものだ。
君をとられまいと職場の1番上の上司である僕を睨みつけては、怒りのオーラをダダ漏れ。
そういうガキっぽくて馬鹿正直で、君に対しての素直さが僕には羨ましかったし、あからさまなあの態度が可愛かったなぁと思い出す。
「すみません…ありがとうございます」
こんなこと考えているなんて君は思いもしないのだろうけど。
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