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 椅子の背凭れを倒し、横になる。  手の中のメモを日付の順に並べると、最初の1枚に目を通す。 『ケイトと会う』  初めて二人が出会った日。  そう思っても、何も出てこなかった。 『指輪を買う』  その指輪が、オレが持っているものに違いない。  他人の人生を盗み見見ている様な気分になりながら、メモを捲っていく。 『ホテルへ』  何度も繰り返し出てくる言葉に、苦笑する。  『会う』と書かれた日には必ず『ホテル』と書かれており、場合によってはホテル名が書かれていた。 「ヤりたい盛りの子供じゃあるまいし…」 『親と口論』  ドキリとして手を止める。  口論?  親とは言え他人でもある両親と、言い合う事をしたことがなかった。  逆らわない事が自分なりの恩返しであり、立場だと思っている。 「口論…」  呟いて、ぼんやりとその原因が彼との事ではないかと思う。  あの両親との口論。  あの二人に逆らう。  実感が持てなくて目をつむった。  幼い頃から慈しんでくれた両親…  大事な…家族…

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