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待ち合わせの目印にしていた像の足元に彼は座り込んでいた。
赤いシャツに茶髪、間違いない。
声を掛けようか悩んでいると、弄っていた携帯電話を閉じてその手から何かを落とした。
伏せていた顔を上げ、足元に落ちたそれを蹴り飛ばしている。
「…」
上げられた顔の端整さに驚いていると、蹴られた物がこちらの足元に転がってきた。
拾い上げてみると、安っぽい作りの指輪のようで、慌てて拾って彼に近寄る。
「なに?」
不機嫌そうだ。
「これ」
「捨てといて」
そう言って歩き出す彼の行動がわからず、思わずその後を追いかける。
「ケイ君だろ?佐藤だけど」
「はぁ!?あんた誰?」
そう言って睨みつけてくる大きなアーモンド型の目に、見惚れて
「佐藤」
と返すと、明らかにその目に侮蔑が浮かんだ。
猫を思わせる彼の目に浮かんだ感情にショックを覚えて立ち竦むと、彼はやや考えるそぶりを見せてこちらを見上げた。
「…………そう。ケイトだよ。佐藤さん」
そう言って笑顔をこちらに向けた時、オレは長年の何かから解放されて、体が軽くなるのを感じた。
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