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 フローリングに二人、体を投げ出して寝転がる。  情事後の気怠い雰囲気の中、圭吾の指をゆるゆると愛撫していた秋良がはっとした顔をして体を起こした。 「ちょっと待っててくれ」 「尻見えてるぞ」 「それには目をつぶっててくれ、あった」  そう言って財布を持って戻ってきた。  圭吾は頬杖をついて不思議そうにそれを見やる。 「うん?」 「これを…返しておこうと思って」  傷跡の残る圭吾の左手を優しく持ち上げ、その指に財布から取り出したものをそっと添わせた。 「…っこれ!」  覚悟を決めて手放した筈だった。  もう二度と手元に戻る事はないと思っていた。 「…どうして……」  そう呟くも、秋良の友人と名乗るあの胡散臭い人物が秋良に渡したのは見当がつく。 「……これ、いる?」 「当たり前だろ!!なんでそんな事…」  さっと圭吾の瞳に水の幕が張る。 「要らないって…聞いたからさ」 「…あのジジィ…っ」  絞り出されたその言葉に苦笑しながら、秋良は小さな方を掴んで圭吾の指にそっと嵌めた。  長い間外していた筈なのに、驚くほどしっとりと指先に馴染んで違和感のなくなるそれにほっと息を吐く。 「嵌めてくれないか?」  差し出された掌に転がる、自分の物よりは少し大きい銀色に光る輪を摘まみ上げる。  つるりとしたシンプルなデザイン。  中に彫られた「keito」の文字と赤い石。  指先でそれを幾度もなぞり、サイズがぴったりの親指に嵌めたりしてその存在を改めて確認してから秋良の手を取った。

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