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「圭吾」 『…今はまだ、本当に本心かどうかわからないけど…でも、おめでたいって心から思う』 「…」 『俺に…祝福なんかされたくないのかもしれないけど…』 「そん…っそんなことないっ!!」  思わず声を荒げた小夜子に、圭吾は言葉を途切れさせる。 「そんなこと…ない……っ……………圭吾」 『ん?』 「…ごめんなさい……」 『え?』 「…私、貴方の前で幸せそうにしてた。圭吾の祝ってもらえたのが嬉しくて…圭吾が新居に来てくれるのが嬉しくて……秋良さんと一緒に居られるのが幸せで…」  鼻を啜る音が聞こえる。 「……圭吾は…辛かったわよね………ごめん、ね…」 『…姉さん程じゃないよ』  そうはっきりと返すが、小夜子はその言葉に嘘が混じっているのは容易に見抜けた。 『………あいつは……血の繋がりのある家族が欲しかったから、すごく喜ぶと思う。きっと…子煩悩で…家庭以外見向きもしないお父さんになる…だから……姉さんも、あいつも…幸せになれるよ』 「……会いに、来てくれるんでしょ?甥か…姪に……来て、くれるわよね?」

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