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『店員さんも困っちゃいます』
ごんっと乱暴に、空のジョッキがテーブルに置かれた。
「はぁぁぁぁぁ?」
目の前の憔悴しきっている秋良にも容赦なく酒と煙草臭い息を吐きつける。
「抱いたって…抱っこじゃないだろ?」
「……当たり前だ」
はぁ~?ともう一度素っ頓狂な声を上げる悪友を睨んだ。
「酔って…圭吾と間違えたんだ…」
「酔っても間違えるか?普通。おーい!ねぇちゃんビールお代わり!」
真剣に聞けよ!と秋良がテーブルを叩く。
どんっと叩かれた振動に促されるように男はもう一度盛大に息を吐いた。
「聞いたところでヤっちゃったもんはどうしようもないだろ?」
「いや…そうじゃなくて…」
「ってか、アナの感触違うだろ?ついてる場所も違うし!気づくよなぁ。なぁ?ねぇちゃん!」
女性店員が持ってきたビールジョッキをひったくりながら同意を求める。
「えっ…」
「膣と尻のアナの違いに気付かないなんてあるわけないよなぁ?」
「っ…あのっ…」
「な?締りが違うよな?全然違うよな?」
「し、失礼しますっ!!」
純情そうな顔をしたその子はぱぁっと顔を赤らめると厨房の方へ駆け出していってしまった。
「ちょっ…おねぇちゃーーーーん」
なんなら試させてよ…と言いそうになった口を秋良の手が覆い、「この酔っ払いめ!」と苦々しい声を絞り出した。
締め付け方がね…違うらしいです
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