304 / 312

29

 たっぷりとミルクを飲んで落ち着いた赤ん坊は、多少の事では起きなさそうな雰囲気だった。 「さ、預かるから寝てるといい」  そっと宝物を抱き上げ、幸せそうに扉に向かう秋良に声をかける。 「秋良さん」 「ん?」 「…さっき……私、夢を見てました。すごく幸せな…」  怪訝な顔が振り返る。 「……圭吾の小さい頃の…」 「…」 「その子によく似てて…」  はらはらと泣き出した小夜子の傍らに、腰を下ろす。 「どうした?」 「……わか…別れて…下さい」  しゃくりが大きくなり、堪えきれなくなった 「……」 「っ…圭吾が……泣いてるかもしれないっ!!寂しがりやだからっ……きっと、貴方に逢いたくて…泣いて……っ」  温かな手が肩を抱く。 「落ち着いて」 「っ…だっ…て、…」 「小夜子」  しっかりとした口調で名前を呼ばれてはっと顔を上げた。 「探して上げて…」 「探しに行く……でも、今じゃない。いつか…」  穏やかに眠る息子の髪を指に絡ませた。  ここから先、将来についての話になります

ともだちにシェアしよう!