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いつもいつも、心の中で叫び続けていたその名前を、思いの丈を込めて囁いた。
「圭吾」
「………」
「…こっちを…向いてくれないか?」
肩を掴まれた体が身じろぐ。
そっと秋良の手に添えられた左手には、薬指と親指に銀色に光る対の輪が嵌められていた。
光を受けるそれに気を取られていると、圭吾がゆっくりと振り返る。
「……………なんで……いるかな…」
縁のほんのり赤い目が細められる。
その拍子に、秋良の姿を映す水の球がぽとりと転がり落ち、秋良の手に落ちた。
「なんで……こんなところで…」
「やっと会えた」
圭吾の涙をぬぐった秋良が、すっぽりと腕の中に圭吾を抱き締める。
「なんで…今更……」
「会いたかった」
「………っ…」
「ん?」
ぽたぽたと涙が落ち、くしゃりの顔が歪む。
「…なんっ……なんで………俺はまだ、お前の事が好きなんだっ…」
そう叫ぶ声が秋良にぶつかる。
なんで…なんで…と繰り返す言葉が繰り返される度に、秋良の腕に力がこもっていく。
「…アキヨシ」
そのやや尋ねかけるかのような呼び声に、「ん?」と返事をする。懐かしい、圭吾がいつも自分を呼んでいたその呼び方に胸がぎゅうと苦しくなり、秋良は詰めていた息を吐き出してなんとかその苦しさを逃した。
「圭吾…」
低く耳を打つその声に顔を上げる。
昔に途切れた、あの記憶のままの生真面目な顔立ちと、肉厚で圭吾の好きだったその唇が柔らかに微笑む。
「圭吾」
もう一度囁かれ、圭吾は再び視界が水に沈むのを感じながら頷いた。
「―――愛している」
吹く風にも掻き消されない確かな囁き声で、秋良は圭吾に告げた。
二度と触れる事のない温もりが再び腕の中にある、
その事に繰り返し胸を締め付けられながら、二人はそっと口づけ合った。
end...?
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