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一心不乱、まさにその言葉がぴたりとあてはまる勢いで駆けて行く。
「と…父さん…?」
ぽつん…と呟く。
いつもどこか飄々とした父の、珍しいその姿をぽかんと眺める。
「知り合い…なのかな……?」
呟いた言葉は強い風に掻き消された。
「…ま……っ待ってっ!!」
名前を呼んだのでもない。
まして他に人も大勢いる中、けれど確信を持っていた。
振り返ってくれると…
地面を踏む足が止まる。
「………」
一瞬だけ…止まる。
けれど次の瞬間、思い直したかのような動きでまた歩き出した。
それを追いかけ、秋良はもつれそうになる足を動かした。
その人に追い付くために、
その人に会うために、
「待ってくれっ!!」
今度こそ相手の歩みが完全に止まり、風に耐えるかのように体をぎゅっと縮めた。
強い風の中、独り堪え忍ぶかのようなその後ろ姿。
「は…はぁ……」
肺が潰れそうな気分になりながら、よたよたと彼の後ろに立ってもう一度、小さく「待って」と呼びかける。
ほっそりした項、
細いシルエットもそのままの…
「…待ってるじゃねぇか」
ぶっきらぼうな…けれど懐かしいその声に秋良ははぁっと息を吐く、
「け…い、ご……」
「んだよ…」
触れれば折れてしまいそうだったその肩に手を置くと、ぶるりと体が震えるのが伝わってくる。
「圭吾」
久しく口に出したことのない名前を呼ぶ。
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