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第1話 謎の研究施設

とある国に、対敵国に備えて結成された組織があった。その中でも特に一目置かれているのが、まだ14歳になったばかりの少年、:No.0(ナンバーゼロ)である。幼い頃から組織で育てられ、あらゆる教育を施されてきた。 No.0は文武両道であり、組織が育てた少年達の中でも群を抜いて優秀であった。そして文字通り眉目秀麗。透き通るように美しい銀色の髪と、血のように赤い色をした瞳を持った美少年だ。 そんな彼が今回国から受けた仕事は、敵国の研究施設の視察であった。そこで行われているという謎の実験の実態を探るため、今から東にあるその施設を目指すことになっている。 「その施設で行われている実験が核の実験や、新兵器の開発であっては我が国が危険に晒される可能性がある。セキュリティを潜り、一人で潜入して実験室を探ってこい」 「…かしこまりました、ボス」 「危険な任務だ。時間はかかっても構わないが、くれぐれも勘づかれることの無いように。期待しているぞ」 恰幅のいい大男は、そう告げると足早に去っていった。この大男が組織のトップである。 No.0は端末でマップを確認し、東へと進んだ。 慣れたように敵国への侵入を成功させ、更に何も無い荒地を進むこと数時間。No.0は、壁に囲われたその施設を見つけた。 端末から組織へと研究所の位置を伝え、一度電源を落とし更に壁へと近づく。門前の見張りは二人。自分の力であれば門を突破することは容易であろうと、彼は確信した。 頭の中のシミュレーション通り、見張りを難なく倒し門の中に入る。しかし、門の先には彼が想定していたような光景はなかった。 「扉がひとつ…?見張りを置かないなんて、不用心だな」 妙に思いながらも建物にひとつ付いている扉を慎重に開く。鍵はかかっておらず、中を伺っても人影は一つもない。 足音を消しながら、慎重に歩を進める。No.0は、まさか門前の警備だけでここは守られていたものなのかと思うと自然に笑みが零れた。舐められたものだ、たいした実験もされていないのでは無いかと気が緩んでいく。 それでもこれは重要任務、今一度気を引き締め、建物の中を探ると地下へ続く階段を見つけた。 階段付近にも人がいる気配はない。音を立てず、辺りを見渡しながら階段をおりていく。 No.0は、自分が思っていたよりずっとこの施設が広いことに気付かされた。 幾百もの部屋が存在する中、一際大きな扉が僅かに開いているのを見つけ、絶好のチャンスだとばかりにそこへ近づく。 その刹那、No.0の体に電流が走った。 振り向いて相手を確認する間もなく袋で顔を覆われ、意識が薄れていく。 誰の足音も気配もなかったはずなのに、どうしてだと思いながらも、その思考すらプツリと消えてしまった。 「…いいモルモットがタダで仕入れられたな。向こうからノコノコやってくるなんて有難い話だねぇ」 そう言った謎の男の声は、No.0には聞こえていないのであった。

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