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第2話

小関さんの仕事は弁護士で、偶然、先輩の友達2人に強姦されている僕を見付けた担任に相談され、僕に二度と手を出せないようにしてくれた人。 担任は数学の教師で、普段はぼんやりとした感じの人だった。 でも、体育倉庫で強姦されていた僕を見つけて、卒業生だからと言って許されないと、ずっと僕の盾になってくれていた。 大嫌いな2人からも解放してくれて、いつも 『大丈夫だ、相馬は俺が護るから…』 と、頭を撫でてくれていた。 最初は、こいつも僕の身体を狙って優しくしてくれていると思って警戒していた。 でも…担任が僕に触れるのは、頭を撫でる時だけだった。 『相馬は綺麗な顔立ちをしているから、狙われ易いのかもしれないな。俺みたいに、The凡人面ならこんな苦労しないで済んだだろうに…』 いつだったか、1度だけ僕の頬に触れてそう呟くと、優しい笑顔を浮かべた。 担任と出会って、本当に優しい笑顔を知った。 いつも僕を見つけると、目を細めて優しく笑いかけてくれた。 『相馬』 って、声を掛けてくれた。 いつしか僕は、担任の小関晃先生を好きになっていた。 僕の家は、両親の喧嘩が耐えない家で、基本的に子供に目を向けるような親では無かった。 そんな環境さえも心配してくれて、卒業間近になる頃には僕を家に泊めてくれたりもした。 小関先生の家は、温かいテレビに出てくるような家族だった。 そんな家族を壊したくなくて、自分の想いは永遠にに胸の中に隠し通すつもりだった。 高卒のつもりでいた僕に大学の進学を進め、今の僕の人生をくれた人。 本当に本当に大好きだった、手の届かない人。 そう思っていた卒業式の日。 僕は思い切って告白をした。 今でも忘れない。 桜が舞い散る裏庭で、人生初の告白をした。 「先生が好きです」 驚いた顔をした先生が、ゆっくり微笑んで 「俺もだよ」 って。 桜が舞い散る景色と、陽の光に照らされた先生の笑顔。 「生徒でいる間は、この気持ちに蓋をしようと決めていたんだ。それに、俺みたいなThe凡人にお前みたいな綺麗な子が好きになってくれるなんて思わなかった」 そう言いながら、そっと僕の頬に触れた手が震えていたっけ…。 本当に幸せを感じた瞬間だった。 もし、時が戻せるなら、この時間に巻き戻して全てをやり直したい。 卒業式が終わり、この日は先生の家で卒業祝いをする事になっていた。 小関先生の兄だった小関さんが、いつも通りに僕を車で迎えに来て、先生の帰りを小関先生の御家族と待っていた。 …でも、先生は帰って来なかった。 僕を強姦していた2人に逆恨みされ、刺されて殺されてしまったのだ。 先生は滅多刺しにされ、見るも無惨な姿になって居たらしい。

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