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第3話

僕は自分の運命を呪った。 小関先生の御家族は、誰も僕を責めなかった。 むしろ、僕が無事で良かったと…。 息子が命を懸けて守った命を、大切にしてくれと言われた。 でも、僕にはそれが辛かった。 誰か責めてくれ!罵ってくれ! 「お前のせいで、晃が死んだんだ!」 って、そう言ってくれ! この日から、僕は荒れた生活をしていた。 喧嘩して、ボロボロのボロ雑巾みたいになった。 痛みが…痛みだけが、僕を責めてくれているみたいだった。 そんな僕を見かねて、小関さんが僕を仕事場兼自宅に使っていた場所に連れて来た。 普段、小関さんはこっちで生活していて、自宅には食事だけしに戻っていたのだ。 喧嘩で見るも無惨な状態の僕の手当をしながら 「お前、馬鹿か!晃が大切にした身体、傷付けてんじゃねぇよ!」 と、怒鳴られた。 「そんなにむちゃくちゃにされてぇなら、俺がしてやる!晃の兄貴の俺が!」 そう言われて、ベッドの上に強引に押し倒された。小関さんはネクタイを外しながら 「言っておくが、俺は男を抱いた事は無い。だから優しく出来る保証はねぇからな!」 そう言ってキスをしてきた。 タバコの味がするキスは、言葉とは裏腹に優しくて、触れて来る手は、小関先生と同じように温かくて優しかった。 「晃さ…ん…」 泣きながら呟いた言葉。 呼びたくても、呼べなかった名前。 小関先生では無く、いつだって「晃さん」と名前で呼びたかった。 『相馬』 って、優しく呼ぶ声はもう無い。 貫かれる圧迫感に涙を浮かべて目を開けると、先生に良く似た…でも違う人の顔が見える。 顎を伝う汗、荒い呼吸、打ち付ける楔の熱さ。 そして僕を見つめる瞳は、僕と同じ大切な人を失った悲しい瞳をしていた。 幾度かの絶頂を迎え、僕は久しぶりに温かい腕の中で眠りに着いた。 翌朝、目が覚めると、頭はスッキリしていた。 散々泣いたからか、気持ちも落ち着いている。 先生を失ってから、ずっと泣けないでいた。 悲しくて苦しくて…でも、現実を認めなくなかった。先生のお兄さんに抱かれて、喘がされて泣かされて…その後、我を忘れて泣きじゃくった。 お兄さんは黙って抱き締めて、僕の背中をずっと撫でていてくれていたっけ…。 「起きたのか?」 ぼんやりとベッドで考えていると、タバコをくわえた小関さんが顔を出した。 「昨日はすみませんでした」 と、発した声がガラガラで、昨夜の行為の激しさを思い出して赤くなる。 すると小関さんは小さく笑い 「お前、そういう顔は男を煽るだけだぞ」 そう言って、頭をくしゃくしゃっと撫でた。 大きな手は、小関先生と同じ温かくて大きな手。 僕はその手に触れて 「じゃあ…もっとして下さい…」 誘うように、小関さんを見上げる。 小関さんは、小関先生よりエリート風なキリッとした感じのいかにも「大人」という感じの人だ。小関先生は、どちらかというと「ポヤポヤ」した感じのおっとりしたタイプだった。 小関先生に何処か似ていて、でも別人のこの人にめちゃくちゃにして欲しかった。 「ったく…。晃の奴、とんでもねぇガキを残しやがって…」 そう独りごちると、ベッドのサイドボードにあった灰皿でタバコを乱暴に揉み消すと、僕の顎を掴んで 「又、失神するくらいに鳴かせてやる」 そう囁いて、荒々しいキスを落とした。 今は、人肌が恋しかった。 身体を這う舌や指が与える快楽に身を投じ、灼熱の楔を捩じ込まれ、荒々しく打ち付けられる度に身体の中を侵食されるような感覚。 汗でしっとりとした背中に爪を立て、喉を仰け反らして喘ぐと、喉を甘噛みされて吸い上げられる。 「あっ……あっ……ぃぃっ!もっと…もっと突いてぇ……っ!」 相手の腰に足を絡め、どんな些細な動きさえも逃さないようにピッタリと身体を合わせる。 すると円を描くように腰を動かされ、再び激しく突き上げられる。 「あっ……凄…ぃ…っ…」 首を振りながら、自分も相手の動きに合わせて腰をくねらせる。 「くっ…」 と、小関さんの口から息を噛み殺す声が聞こえる。 「全部、持っていかれそうだな…」 荒い呼吸の合間に、小関さんはそう呟いて僕の両足首を掴むと、腰に枕を入れて足を高く上げると、上からガンガンと腰を打ち付けて来た。 「ひっ……、深ぁ…ぃ…!」 仰け反って叫ぶ僕に、容赦なく腰を進める。 今まで入れられた事の無い場所を開かれる感覚と、身体を襲う快楽に我を忘れてヨガり狂った。 全身が痙攣して、目の前がチカチカとし始める。 「あっ!……なにぃ……?怖い……いやぁぁ!」 感じた事の無い快楽に、全身の震えが止まらない。 ガクガクと身体が震え、僕は意識を手放した。

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