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第81話

あの日から、早いもので3ヶ月が経過した。 お正月休みに帰国しようとも考えたけど、逆に会った後の別れが辛いのを12月に身に染みてしまい、僕は帰国しなかった。 海もその辺は理解してくれて、僕達は相変わらずLINEでのやり取りで日々過ごしている。 海が日本を発つ日も決まり、一条家がアメリカに来る日の連絡が海から入る。 カレンダーに記入はしてあるものの、僕はやっぱり学会やら教授の手伝いやらでバタバタしていて会いには行けそうになかった。 海は「いつでも会えるんだから」と言ってはくれているけど…。 会いたい気持ちは募るばかりだったりする。 「はぁ…」 溜息を吐いて、いつもの町並みを歩く。 今日は教授の都合で急遽休みになった。 買い物でも行くかって、近所のマーケットに立ち寄る。 …とは言え、食べたい物も無く。 適当にパンでも買っていくか…って考えていると、聞き覚えのある声が聞こえる。 買い物をしていたらしく、なにやら店員さんに聞いているみたいだった。 探している調味料が無かったらしく、ガッカリとした顔で手にした野菜を見ている人物に心臓が跳ね上がる。 その人物は諦めたように野菜を置いて、僕の視線に気付いたらしく視線を上げた。 「和哉さん?」 驚いた顔をしたその人物に、僕はマーケットの中だと言うのを忘れて飛び付いた。 「え?どうしているの?来るの、今月末だよね?」 目を輝かせて聞くと、僕が会いたかった人物がふわりと微笑み 「先に来て、和哉さんの家にしばらくお世話になろうと思いまして」 って、微笑んだ。 「海…本当に海?」 会いたくて会いたくて仕方なかった人物の頬を両手で挟むと、海は僕の手の上に海の手を乗せて 「はい。手料理作りに来ましたよ」 そう微笑んだ。 「でも…まさか、こんな所を見られるとは思いませんでした」 困った顔をする海に、僕はギュッと抱き付いて 「会いたかった…。ずっと、ずっと会いたかった」 そう呟く僕に 「あの…和哉さん。大歓迎は嬉しいのですが…ここ、マーケットの中」 と言われて、僕は真っ赤になる。 「ご…ごめん」 慌てて離れる僕に、海は優しく微笑んで 「取り敢えず、会計してきますね」 って、僕の頭を撫でてお会計している。 なんだか、少し見ない間にすっかり大人びていて、ちょっと…いや、かなり?ドキドキしてしまっている。 会計を済ませると 「お待たせしました。じゃあ、行きましょう」 そう言って、海が自然に手を差し出す。 僕は笑顔でその手を掴み、二人で手を繋いで歩いた。

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