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第80話
「…やさん……ず……や…ん、和哉さん」
昨夜の激しい情事に疲れ切った僕の身体を、海が揺すって起こしている。
「…るさい!もう少し寝かせろ!」
怒って叫ぶと
「寝かせてあげたいのは山々なんですが、チェックアウトの時間もあるので…」
って、海が困ったように呟いた。
顔を見上げると、肌艶が良いわ〜。
さぞかし、満足頂けたのだろうよ!
恨みの視線を向けると、海は叱られた子犬のようにしょんぼりとした顔をしている。
「お前…」
声が別人のようにガッサガサの自分にも腹が立つが、僕がこんなに疲弊しきっているのに、生き生きしているこいつは化け物か?
平然としているこいつに腹が立って仕方が無い。
恨みの視線を向けていると
「すみません。自制が出来ませんでした」
小さくなって謝る海に、仕方ないなぁ〜と思ってしまう僕は、すっかりこいつに絆されてしまっているんだろうな。
「お前…、少しは加減てものを覚えろ」
そう呟いてゆっくりと身体を起こす僕を、健気にも補佐してくれる。
それだけで胸がキュンとしてしまうあたり、僕も重症だな。
苦笑いした僕に、海が
「何処か痛みますか?」
って聞かれて
「あぁ?全身痛いわ!特に下半身!感覚無いわ!このアホ!」
海の頭にチョップをすると
「本当に…すみません」
って落ち込んでる。
僕は大きな溜息を吐いて
「誕生日の主役が、そんな顔すんなよ。まぁ、煽った僕も悪かったし」
そう言って、ベッドに座って僕を見つめる海の首に手を回してキスを求める。
抱き締められて、そっと唇が触れる。
好きな人とのキスは、それだけでとっても気持ちが良い。
溶けてしまいそうな気持ちでキスを交わしていると、部屋のドアがノックされた。
「おい、そろそろ支度しろ!下で待ってる」
小関さんの声に、現実に引き戻される。
「タイムアップだな」
そう呟くと、海がギュッと僕を抱き締めて
「会えるのは嬉しいですけど…、又、離れるのが辛いですね」
切なそうに言われて、そっと頬に触れる。
「後、3ヶ月だ。そんなのすぐだよ」
僕の言葉に、海が唇を塞ぐ。
「和哉さんを、この腕に閉じ込めてしまいたい。でも…それはあなたと、あなたを命懸けで守った人を裏切る事になる。だから、我慢します」
唇が離れ、強く抱き締めると海がそう呟いた。
「海。僕は昨日、海に全てを捧げたんだ。何処に居ても、何をしていても…僕は海のモノだよ」
「和哉さん…」
お互いの額をコツンと当てて、僕達は微笑み合う。
このまま時が止まれば良いと、願わずにはいられなかった……。
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