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第2話 秘密の契約

 人生で今までに告白してきた相手は3人。過去の2人には、同性の自分を恋愛対象として見ることができないと丁重にお断りされた。今回のように『それでも良ければ』と提案されたのは初めてなので、少々戸惑っている。 「どんな性癖なんですか」 「これを読んでもらえれば分かる」  先輩から送られてきたメールを読んだ貴臣は唖然とした。 「これは……近年稀に見るド変態野郎ですね」 「だ、だろ? というかよくこんな事を暴露する気になったよな! 俺だったら誰にも言わずに墓場まで持っていくよ!」 「それで、相手は何て?」 「自分はこんな変態だし、諦めて他に好きな奴を見つけたらって」 「兄さんはそんな性癖でも構わないって言ったんですか」 「保留にしてる。正直、理解できない性癖もあるから、どうにかして自分の変態度を高めようかと考えてる」  貴臣はもう一度メールを頭から読み返し、考え込んだ。 「もし付き合うとなったら、先輩は兄さんにこれらを強いてくる可能性があるという訳ですね」  う、と唇を横に引く。  いざそういうシーンを妄想すると恥ずかしくて耐えられなくなってしまう。俺は未だ童貞だ。だがエロには興味津々な17歳。性欲は人並みにあると自覚している。 「ちなみに、兄さんは先輩のことは本気なんですか」 「えっ、本気だよ! だからちゃんと告白して……」 「なら、お付き合いできるように頑張ってみましょうか」  貴臣は徐に、紙とペンを持ってきてメールに書かれている内容を全て書き写した。  貴臣は書道歴10年。卑猥な言葉も達筆な文字で書かれると、そこまで卑猥に思えなくなるから不思議だ。 「先輩の性癖を理解する為に、1つずつ特訓していきましょう。俺が協力してあげます。全てクリアできたら先輩に改めてお返事をするということで」  不敵な笑みを浮かべる貴臣にドキッとする。  しかし、協力? 言われている意味が分からない。 「貴臣が何を協力するの?」 「だから、ここに書かれていること全て、兄さんが成し遂げられるように面倒見てあげますって意味ですよ。俺の前で少しずつ慣らしていけば、先輩とする時に戸惑うこともないでしょう」 「はっ⁈  お前、こんな……こんなに沢山のエロいことを、お前の前でするの⁈」 「このことは誰にも言いませんし、家族として、弟として兄さんのためにしてあげたいんです。兄さんも誰かに試してみないことには始まらないでしょう」  確かに書かれている内容を今先輩とするには、かなり抵抗がある。  貴臣だったら昔から俺を慕ってくれているし、多少情けない姿を晒しても笑われない自信はある。秘密は厳守するだろうし、何もかも知り尽くしている貴臣の前だったら恥ずかしいことでも耐えられるんじゃないだろうか。 「先輩とお付き合いしたいのでしょう?」 「う、うん、したい」 「なら俺と一緒に頑張っていきましょう」  なんだかよく分からないうちにそんな契約を交わしてしまった。  カレーを食べてから風呂に入って自室のベッドでゴロゴロしていたら、早速貴臣に呼び出された。

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